2016年6月23日に実施されたイギリス国民投票の結果、EU離脱派票が51.9%、EU残留派票は48.1%となり、僅差で離脱派が上回った。この結果、急激な円高ポンド安になる等、旅行者目線ではメリットに目が行く一方、ロンドンでの国民投票のやり直しを訴える数万人のデモや、外国人の営む商店への嫌がらせが発生していることが日本国内報道で伝えられており、治安面は注視していきたい。また、これからEU離脱の準備が進むとみられるが、これからイギリスに旅行を考えている日本人にどのような影響があるのか、HowTravel現地在住ライターがリポートする。
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EU離脱決定から1か月 現地の反応と不透明な行先
(現地在住ライター バックリー佳菜子)国民投票によりEU離脱が決定してから1ヵ月、新しい首相・内閣が決まり2年後のEU離脱に向け動き始めている。決定直後にはショックを受けた人たちの書き込みがSNSにあふれ、混乱していたが、1か月経ち今は大分落ち着いたように見える。しかしBBCで報道されているように離脱決定後1か月でイギリス経済が大きく落ち込んでいるデータが示されるようになり、現地でも離脱による経済の冷え込みを心配する声が多くなっている。
また、イギリス地方都市などでは高い失業率など国内政治への不満が移民・外国人への不満となり、離脱派優勢につながったとする見方もあり今後の動きを注意深く見ていく必要がある。逆にスコットランドでは残留派が多かったにも関わらずEU離脱が決まったことで、2年前のスコットランド国民投票で独立とはならなかったものの、再度イギリスからの独立運動への機運が高まると予想されており、さらなる影響が出ると考えれる。
離脱直後の国民投票やり直しを希望するデモなどの動きは落ち着いてきているが、経済の冷え込みが長期化すれば2010年の経済危機後のように、失業率の上昇・給与や待遇の不満などから大規模デモやストライキなどが起こる可能性がある。旅行前の情報収集ももちろんだが、もし旅行中にデモなどを見かけても近づかず、すぐその場を離れることをお勧めする。また円高ポンド安のため、多めに現金を両替したくなるかもしれないが、ひったくりやスリ・置き引きなどの被害に遭わないよう現金を大量に持ち歩かず、小分けにしたりクレジットカードを利用するほうが賢明である。
日本人はもはや特別ではない
(現地在住ライター 竹内奈緒美)
2016年6月に実施された国民投票の結果、イギリスのEU離脱が決定し、それにともなってロンドン等各地でデモやヘイトクライムが発生した。特にポーランド食材店やポーランド人に対するヘイトクライムが多く報じられているが、その一方で、バーミンガムではBBCの女性キャスターが黒人であることを理由に差別的な言葉を浴びせられたと自ら告発した。
また各地で暮らすイスラム教徒への暴言も後を絶たず、悲しみにくれる彼らの様子が度々報じられた。ヘイトクライムが国民投票後に急増したため、EU離脱決定が引き金になったと考るのが妥当だが、迫害を受けた女性キャスターやイスラム教徒はEU圏内から来た移民ではなかった。これはつまり、ヘイトクライムの対象がEU圏内から来た移民に限ったことではないということを示している。
国民投票後に大きく報じられるようになったヘイトクライムではあるが、これまで明らかにしてこなかった移民つまり「よそ者」への嫌悪が露呈しただけに過ぎないと考えると、日本人観光客がそのターゲットになる可能性も十分にある。よって、見ただけで外国人だとわかる日本人がイギリスを旅行する際に心がけるべきは 「日本人だから大丈夫」という思考は捨てることだ。
日本人に対する海外の好意的な報道を目にするにつけ、日本人は世界に受け入れられているように感じるかもしれないが、その思い込みは現在のイギリスでは非常に危険だ。日本のことを「東の小国」、日本人を「よそ者」程度にしか認識していないイギリス人も少なくないということを忘れてはならない。
島国であることや皇室の存在など、イギリスは日本との共通点も多い。しかしそれはその精神性まで似ているということを意味しているわけではない。イギリスへの旅行だから、日本人だから、と油断せず、海外旅行に来た外国人として、出来る限りの注意を払い、安全で思い出に残る旅を楽しんで欲しい。
現地で事件に巻き込まれたら
(HowTravel編集部)
ヨーロッパ諸国全般にいえることではあるが、大規模なデモやストライキが非常によく発生する。迷惑な話ではあるが旅行者に一番影響が出る時期や時間帯をわざと狙ってくる場合もある。ストライキによって旅行者に危険が及ぶということはないが、今回のEU離脱は移民排斥のテーマも絡んでいることから、デモ隊に不用意に近づくことは避けた方が良い。また、混乱に乗じた強盗やスリも懸念されるため、もしもの事態のために大使館の場所や連絡先はしっかり確認しておこう。現地の情報収集を行い、安全第一で観光したい。
■在英国日本国大使館
TEL: +44 20 7465 6500
住所: 101-104 Piccadilly, London