昨年だけで数百万人の中東系難民・移民がヨーロッパに押し寄せたことが伝えられており、特にドイツでは難民・移民が引き起こした可能性のある事件が数多く発生している。中東系の難民発生する以前から、旧宗主国の立場もあって多くの移民を受け入れてきたイギリスだが、果たしてテロの心配はないのか、旅行者に危険はないのか、また、テロに限らず観光する際に気を付けるべきことは何か等、イギリス・ロンドン旅行予定者必見の情報をHowTravel現地在住ライターがリポートする。

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目次

難民・移民受け入れに積極的でないイギリスへの影響は軽微か

(現地在住ライター バックリー佳菜子

●イギリス現地の状況

ガーディアン紙3/4の記事によると2015年のEU加盟国への難民申請件数は、前年比の2倍126万人に上りその3分の1の申請先はドイツ、続いてハンガリー、スウェーデンとなっている。今月にドイツ各都市でテロが発生したこともあり、ドイツではメルケル首相の積極的な移民受け入れ姿勢を批判する声が高まっている。

欧州他国に比べ今回のシリア難民受け入れに積極的でないイギリスには直接的な影響はそれほど多くないというのが印象である。しかし、イギリスは歴史的にに多くの移民を受け入れてきており、国民投票でのEU離脱決定後、ヘイトクライムが複数報道されたように、移民に対して良い印象を持っていないイギリス人もいるのが現実である。

●イギリス旅行時の注意点

移民・難民問題が直接テロに結び付くわけではなく、欧州各国でテロが発生している今、イギリスでテロが発生するどうかは専門家でも予測が難しいのが現状である。しかしイギリス保安局MI5発行のテロの脅威レベルもいまだ高いため、イギリス旅行中は人で込み合う場所に出かける際には常に周りに注意をしておくべきであろう。

またイギリス人の中には人種差別意識が強く、移民政策に反発している人もいると頭の隅に覚えてえおくといいだろう。筆者も在住15年の間に何度か人種差別的な言葉を投げかけられた事があるが、そのような目に遭っても、相手を挑発するようなことはせず、無視を決め込みその場を離れるのが得策である。

自衛と責任ある行動で未来へ繋げる

(現地在住ライター 竹内奈緒美

●イギリス現地の状況

難民政策がヨーロッパ圏内の国々で既に大きな問題となっている。6月に実施された国民投票でEU離脱派が勝利したのは、この難民・移民政策への不満・不安を大きく煽ったからだと言われている。年中観光客が訪れるロンドン中心部では75%の市民がEU残留に投じたが、これは逆を返せば4人に1人が移民や難民に対して不満を抱いているということになる。現にロンドンでは、国民投票後1週間でヘイトクライム発生件数が52%増加し、今後も更に増える可能性があるとしている。これらの事件は差別用語によるものが大半を占めているが、中には暴力を伴うものもあったという。

●イギリス旅行時の注意点

このような状況の中、ロンドンを観光するのであれば、まず第一に「危険を嗅ぎ分ける感覚」が必須となる。事前調査で安全とされる場所であっても、様々な人で溢れかえるロンドンにおいて、その情報を信頼しきってしまうのは危険だろう。常に周囲の様子に注意をはらい、少しでも怪しいと思う場所には近づかないことだ。

次に重要なのは、日本人がイギリス人からどう見られているかを意識する、ということだ。日本人が裕福だと思っているイギリス人は多く、ましてやポンド安が進んだ現在のタイミングでやってくる日本人観光客はスリの格好のターゲットとなる。いかにも観光客らしい出で立ちで出歩くのは避けるべきだろう。

最後に重要なのは、残念ながら事件に巻き込まれた時、決して泣き寝入りをしないことだ。これは、事件発生時に抵抗したり反抗することではなく、必ず地元の警察や日本大使館に通報することを指す。限られたイギリス滞在時間の中、そのような手続きに時間をとられるのは惜しいと思うだろうが、これは他の日本人観光客への注意喚起に繋がり、自衛の意識が強まる効果が期待できる。

旅行は極めて個人的な活動のひとつだ。だが海外旅行となると、意図せずとも自分が様々なカテゴリーに当てはめられ、それによる影響を受けることがある。現在の日本人がイギリスを旅行できるのも、過去にイギリスを訪れた日本人旅行者の責任ある行動あってのこと。今後も日本人が、安全かつ楽しく旅行ができるよう、今度はあなたが責任ある行動で自衛しつつ、イギリスを旅することを期待したい。

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現地で事件に巻き込まれたら

(HowTravel編集部)

中東難民・移民の受け入れ数が少ないイギリスでは、このことが原因での治安悪化の影響は大きくないようだ。HowTravel編集部も6月中頃にロンドンを訪れたが、移民や難民かつてに比べて大きく増えたようには感じなかった。そもそも、イギリスは入国の時点で非常に厳しい審査があったり、街中のいたる所に監視カメラが設置されていたりと、平時から犯罪への対策が厳しい。ただ、事態が急変する可能性もあるので、警察署の場所・連絡先、大使館の場所・連絡先はしっかり確認しておこう。現地の情報収集を行い、安全第一で観光したい。

■ロンドン市内の警察署
・警察署
ロンドン市内の警察署はここから検索できる。まず、地図でエリアを選び、XX homepageを選択、Police stations欄にその地区の警察署が出てくる。旅行に行く前に、ホテルのある地区の警察署は確認しておきたい。

・被害届
日本語訳付きの被害届作成依頼書はここから入手できる。被害にあわないに越したことはないが、印刷してイギリス旅行に持っていけばいざ言うとき安心だ。

・電話番号
日本と同じく101で警察に電話をかけることができる。

■在英国日本国大使館
TEL: +44 20 7465 6500
住所: 101-104 Piccadilly, London