11月8日から始まったアメリカ大統領選挙の結果が11月9日に明らかになり、ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ大統領に就任することが決まった。事前のメディア予想ではことごとくヒラリー・クリントン氏の優勢が伝えられていたため、この結果は世界中で大きな驚きをもって受け止められている。
海外現地在住ライターが、各国での受け止められ方をリポートする。
目次
【アメリカ】トランプの作戦勝ち!激戦を制し異例だらけの大統領誕生
(現地在住ライター 長谷川サツキ)「クリントンの秘書から当選を祝福する電話を受けた」というトランプ勝利宣言に、アメリカの支持者は大歓声を上げた。政治経験も軍歴も一切ない一般人が大統領に就任するのは、なんとアメリカ合衆国建国以来初めてのこと。70歳という就任年齢も過去最高齢という、まさに初めてづくしの大統領の誕生だ。民間の不動産会社社長が、まさに言葉の通り全米中を巻き込んでの大騒動の末に大統領へ就任した様子を「リアリティーショーのスターだ」とニュースは報じている。
トランプの当選の背景には、クリントンに対する不信・不人気が大きく影響した。トランプ当選を受けたアメリカ国民の反応は真っ二つだ。「やった!トランプよアメリカを変えてくれ!」と破天荒な大統領に期待する声と「国民はトランプの策略にはまってまっとうな判断を誤った」と嘆く声。アメリカの政策はこれまでとはガラリと変わる可能性が高く、トランプ当選は日本との関係にも大きな変化を及ぼしそうだ。
【イギリス】イギリスのEU離脱に次ぐ驚きの結果
(現地在住ライター バックリー佳菜子)
第45代アメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が就任することが決まり、イギリスでも驚きとともに報道されている。特に共和党と民主党の人気が分散し、選挙のたびに共和党候補と民主党候補の勝利が逆転してきたフロリダ・オハイオ・ノースカロライナ州でのトランプ氏勝利が確定したと報道された際には、イギリス国内でもEU離脱結果発表の時のようにまさかという声が上がった。
トランプ氏の就任が確定し、各報道では彼の外交政策に関する懸念を指摘する声が高まっている。特に移民政策とロシアとの関係に関して、彼はかなり過激ともいえる主張をしてきただけあり、今後イギリスひいてはヨーロッパの情勢に影響があるはずだと懸念されている。
【ロシア】トランプ氏は米ロ関係の救世主になれるか
(現地在住ライター ティムペトゥホフ)ここ数年で米ロ関係は最悪に近づいたと言っても過言ではない。多くの専門家の意見では、現在の米ロ関係は冷戦後以降最も冷え切っているとのことだ。両国はお互いに経済制裁を発動しただけでなく、シリア戦争でも競争が激化している。この状況が続けば、米ロの武力衝突が起きる可能性すら否定できない。また、両国は核兵器を持っている国なので、その武力衝突は核戦争に発展する可能性が高い。
アメリカとロシアの関係にはアメリカの新大統領が大きく影響するだろう。そういった理由で、11月8日にアメリカで行なわれた大統領選挙はアメリカ人だけでなく、ロシアでも大きな話題となった。ロシアの政治アナリストのほとんどは、ドナルド・トランプ氏が就任すれば、米ロ関係はよくなると考えている。また、トランプ氏は大統領選挙キャンペーン中にロシアのプーチン大統領を高く評価し、両国関係を改善したいと何度も発言をしていた。もちろん、ロシアはトランプ氏の米ロ関係を改善する意思については大歓迎で、政治家だけでなく一般市民もトランプ氏の就任を支持している。
今春、ドイツのハンデルスブラットグループは、主要20か国(G20)に入っている国でアメリカ大統領選挙に関する世論調査を行なった。その調査の結果によると、最もトランプ氏を支持していたのはロシアだった。多くのロシア国民は、トランプ氏のロシアに対する態度を支持し、民主党大統領候補者ヒラリー・クリントン氏よりもっと律義者に見えるそうだ。
国民だけでなく、政治家もトランプ氏の就任に大きな期待を寄せている。今夏、プーチン大統領は記者会見でトランプ氏を「印象が良い人」と呼んで、彼の両国関係を改善する意思を歓迎した。また、議会の政党リーダーは、トランプ氏の勝利を支持して、米ロ関係の新しい時代の開幕を見込んでいる。