世界でも最も発展している国の一つであり、地政学的にもアジアの中心に位置するシンガポールには、アジアでのビジネス展開を狙って世界中の企業や人材が集まっている。その結果、3人に1人が外国人労働者であるという、多数の移民を受け入れる国家となっている。移民を受け入れている国は治安が悪いイメージがあるかもしれないが、シンガポールは高度な技術を持つ人材ばかりを選別して受け入れており、2010年度の犯罪発生件数は日本が約1100件に対して、シンガポールは約600件と日本と比べても治安が良い。その一方、教育水準が高い日本人とはいえ、シンガポールに移住するのは容易ではなく、学歴・給与・職種などが総合的に勘案される。そんなハードルを乗り越え、シンガポールに移住して働く日本人の体験談をご紹介する。

シンガポールの物価情報はこちら
シンガポールの就職体験談はこちら

スポンサーリンク

目次

チャンスは突然に!海外移住成功の秘訣は行動力

(現地在住ライター 後純也

海外移住に興味を持ったのは社会人1年目の冬、1冊の本がきっかけだった。学生時代から海外には興味があったものの本格的な留学を経験する機会には恵まれず、気が付けば多くの人が経験するように新卒社会人になっていた。1日に数時間しか寝られない日も多々あるCM制作の現場でゆっくり立ち止まって考える暇もなく、あっという間に時間だけが過ぎていった。

心も身体も人生で一番疲弊していた時期に、ひとつめの転機が訪れた。頭の中のモヤモヤを解決する答えを求めるように立ち寄った本屋で偶然手に取ったのは同年代の世界一周体験記が綴られたエッセイだった。そこには色んな方々の色んな旅のスタイルが紹介されており、彼ら彼女らの行動力や人生の考え方に心底興味をそそられた。「一度きりしかない人生をいかに有意義なものにするか」、「今の年齢でしかできないことが世界にはたくさんある」そんなことを考え始め、海外留学や海外就職体験記などを読み漁った。この時、既に気持ちは日本を出る、あるいは海外と繋がりがある仕事をすることに切り替わっていた。

そこからは退職まではあっという間だった。しかし、無事に退職できたのはよかったものの次の仕事を決めていたわけではなく先行きは真っ暗。何をどうすればいいかも分からず、何の気なしにSNSを眺めていたらふたつ目の転機は突然降ってきた。

「シンガポールで日本人ですぐに働ける方を探しています!」

発信者は海外留学に関する著書等を手がけた起業家さん。「これは運命かもしれない…!この話が上手く行かなくても、この方と繋がれば何か面白いことが起こるかも!」そんなことを考えてすぐに連絡をし、話はトントン拍子に進んだ。

英語力に自信があったわけではないので不安はあったが、先方は日本語スピーカーを探していること、お給料はシンガポール政府が規定している額が最低限保証されていること等など、なかなかの好条件だった。懸念点があるとすれば、シンガポールに一度も行ったことがなかったこと。しかし、仕事を選んでる余裕がないぐらい切羽詰まっていたのでそんなことはどうでもよかった。結果は見事に合格。レジュメを用意してものの2週間で晴れて海外就職に成功したのである。

そして、さらに2週間後にはシンガポールにいた。あまりのスピードに正直ロクな準備もしないで日本を飛び出してきたので一般的の現地就職の流れと大きく異なるかもしれない。簡単な会話レベルの英語が急に上達するわけでもなく、そんな初心者が中国語やマレー語、ヒンドゥー語訛りの独特の英語をいきなり理解できるわけがなかった。来星当初はまさに右も左も分からない状態だった。言いたいことが言えない、言っていることが何となくでしか理解できない。当たり前だったことが急に出来なくなるのがこれほど苦痛に感じるなんて思いもしなかった。

幸い、オフィスには日本人スタッフもいたので環境に慣れるまで大変お世話になった。シンガポール生活に慣れてきたところで、思い切って同年代のフィリピン人とルームシェアすることにもした。改めて海外にいることを実感すると共に、日本ではなかなか体験できないことがこの国ではたくさんできた。外国人の仕事の仕方や考え方、人生観の違いを知れるのは特に刺激的だった。来星当初は簡単な言葉しか喋れなかった英語力も、今では英語で仕事ができるレベルにまで上達し、英語での新人トレーニングなど仕事を任されるまでになった。

すっかり海外生活に魅了されてしまうと、日本での生活が”too much”に感じてしまう。日本は確かに便利で、お腹が減ればコンビニに行って美味しいものを買えるし、欲しいものはネットでワンクリックで手に入る。必要な時に必要なものがタイムリーに手に入る、街中を歩いているだけでも色んな広告が目に入る程、情報が豊富なのは世界広しといえども日本ぐらいではないだろうか。しかし、その贅沢さにはもちろん裏がある。便利過ぎる故に考えなくても生きていける社会構造になってしまっている。海外生活は不便だ。コンビニも日本ほど豪華じゃないし、ネット通販も良いサービスとはいえないし、お店だって日本より見劣りするものばかり…。しかし、その不便さが社会を生き抜くための思考力を育ててくれる。健康な日々を送るために限られた選択肢の中で何を食べればいいか、生活に本当に必要なものは何か、贅沢な日本にいたら気づかなかった(気付けなかった)ことだ。

シンガポールで生活している人たちはみんな幸せそうだ。みんな限られた環境の中で何が人生を良くするのかをよく知っている。海外移住して苦労も挫折もたくさんした。でも、それ以上に人生を豊かにするヒントをたくさん吸収できた。日本人の需要は世界各国である。先人が築き上げたジャパン・ブランドの信頼は未だに厚い。チャンスはどこに転がっているか分からないし、チャンスも掴んでないのに悩んだって仕方がない。チャンスがあるならとりあえず掴みにいって、本当に掴めたらそこから考え出せばいい。とてもシンプルなことだが、これが私なりの海外移住を成功させる秘訣だ。

移住にはシンガポールでの仕事を見つける必要がある

(HowTravel編集部)

移住するといっても、よっぽど大金を持っていない限りは現地で職を探す必要がある。ただ、いきなり現地企業に直接応募するというのはなかなかにハードルが高いと思う人も多いだろう。実際、シンガポールでの就労ビザを持っていないと門前払いされてしまうということも多い。

そこでお勧めなのが、日本人の海外転職を支援している転職エージェントを利用することだ。案件は大きく2種類あり、一つは日系企業の現地スタッフ募集案件で、もう一つは現地企業の案件だ。どちらにしても日本人を対象に募集している案件なので、英語要件がやや低かったり、ビザ取得のサポートをしてくれたりと、個人で現地企業求人に応募するよりも遥かにハードルが低い。

案件は水物なので、とりあえず登録をしておいて、面白そうな案件があれば話を聞いてみるでも良いだろう。シンガポールでの就職に少しでも興味があるのであれば、とにかくアクションを起こそう。

■お勧めのシンガポール就職案件に強い転職エージェント
①JAC
JACはイギリス発の日本人転職支援企業で、世界9カ国にオフィスを持つ。シンガポール単独でみた場合の案件数は必ずしも多くはないが、直接企業を訪問したコンサルタントが相談に乗ってくれるのがありがたい。海外転職であればまずお勧めしたい転職エージェントだ。日本の転職業界で3位の売上を持ち、実績も十分。

➡ JACで求人案件をみてみる

②リクルートエージェント
リクルートエージェントは言わずと知れた業界No.1の転職支援企業であるリクルートの運営する転職エージェントサイトで、エージェントが自分に合った案件を紹介から面接までサポートしてくれる。日系企業の現地スタッフ案件が多い傾向にはあるが、海外案件も豊富だ。サイト上では公開されていない、非公開案件がほとんどなので、とりあえず登録をして案件をみてみることをお勧めする。

➡ リクルートエージェントで求人案件をみてみる