海外旅行をする際に非常に気になるのが、言語の問題だ。英語が通じる国であれば、身振り手振りと英単語を駆使して、最低限伝えたいことは伝えられるかもしれない。一般的に、シンガポールは英語が通じる国であるといわれるが、実際のところはどうなのだろうか。シンガポール在住ライターがリポートする。
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英語なのに聴き取れない!?「シングリッシュ」は新しい英語!?
(現地在住ライター ウシロスミヤ)「アジアのハブ」と呼ばれるシンガポールには世界各国から旅行者が後を絶たない。また、近年は急激な経済発展や教育水準の大幅な向上によって小国ながらアジアの中心国を担うまでに発展してきた。そんなシンガポールの著しい発展を支えているのは他でもない「英語」なのである。
●シンガポールの英語事情
英語が公用語というだけあってシンガポール人は幼少時から英語に慣れ親しんでいる。また、英語が公用語なので主な生活環境は仕事場も含めて英語でやりとりできるため、英語ができる外国人居住者の割合が非常に高いことも特徴だ。
しかし、ローカルの学校で教えている英語はあくまでも公用語(あるいは第二言語)としての英語なので、シンガポール人は英語ネイティブスピーカーではないという事実を知って驚く人がいるかもしれない。
過去の記事でも触れたが、シンガポールは大きく分けて中国人、マレー人、インド人が成る多民族国家である。ある日突然マレーシアから見放された小国のシンガポールは独立を余儀なくされ、大国に囲まれたアジアで生き残るために母語が異なる3つの人種を団結させる必要があった。そこで導入されたのが、共通語である「英語」だったのだ。
●ネイティブスピーカーでも分からない!?これがシンガポールの「英語」だ!
日本でもそれぞれ地方の訛りがあるように、英語にも国によってそれぞれ訛りがある。
日本の英語教育で一般的なのはアメリカ英語だが、最近ではイギリス英語に注目した教材が充実していたり、オンライン英会話で世界各国の英語講師とコミュニケーションをとれるので各国の英語の音を身近に感じることができるだろう。
日本人にとっての標準英語がアメリカ英語だとすると、シンガポールの英語はかなり癖があるように聴こえる。独特なシンガポール訛りの英語は「シングリッシュ」と呼ばれ、解説本があるぐらい奥が深い。
今回はシンガポール滞在や旅行を考えている方のために、簡単にシングリッシュについて特徴をまとめてみたい。
①訛り
シングリッシュが独特と言われるには訳がある。初めてシンガポールへ来た方がまず驚くのが訛り。英語にそれぞれの母語のイントネーションが混じっていて英語なのか別の言語なのかを区別するのに慣れが必要なのだ。
以下は個人的な印象となるので参考程度にご覧いただきたい。
・中華系シンガポール人の英語
マシンガントーク系。中国語のスピード感溢れる語調で、中国語のイントネーションで喋るイメージ。
・インド系シンガポール人の英語
巻き舌系。語尾がタミル語につられていて簡単な単語でも聴き取りにくい。訛りが強いとシンガポール人ですら一回で聴き取れないぐらい。
・マレー系シンガポール人の英語
マレー系のシンガポール人は中華、インド系より比較的聴き取りやすい。
②方言
シングリッシュのハードルを上げているもう一つの要因が方言。3つの主要言語が飛び交う中で第二言語として英語が独自に発展してきた背景もあり、シングリッシュ特有の方言や言い回しが多数存在する。
語尾に「lah」や「meh」をつけて強調を表す表現は代表的である。
●シンガポールへお越しの方へ…
シングリッシュの特徴を簡単に紹介してきたが、中にはシングリッシュが難しく感じた方もいるかもしれない。日本式の英語教育を受けてきた人なら多少なりとも違和感を感じるはずだ。
しかし、われわれ日本人の英語にも訛りがあることは理解しておく必要がある。英語には日本語にない音やアクセントが多数あり、日本人がアメリカ英語やイギリス英語の発音をコピーしたり、聴き取れるようになるにはそれなりのトレーニングが必要となる。
一方、シンガポール人は訛りや方言があるとはいえ、洋画、洋楽、洋書はごく普通に英語のまま楽しめるし、英語ネイティブスピーカーとも当たり前に仕事をしている。また、欧米の大学や大学院を卒業している人も大勢いるので、一概にすべてのシンガポール人に強い訛りがあるとも言い切れない。
むしろ、シンガポール人からすると日本人の英語の方が聴き取りにくいことも多々あるだろう。しかし、シンガポール人はちゃんと理解しようとしてくれる。多文化国家という土台がある上、英語は公用語という認識が強いのでネイティブスピーカーのように英語ができなくても十分理解に努めてくれる。
ただし、お察しの通り日本語はほとんど通じないので、シンガポール旅行を目一杯漫喫したいならシングリッシュの特徴を予習し、最低限の英語(もしくは中国語(福建語)、タミル語、マレー語のいずれか)を準備しておくことをお勧めする。