ドイツに旅行するのであれば認識しておきたいのが「ネオナチ」の存在だ。一般的に、ネオナチとはナチズムに傾倒し、さながら第二次世界大戦中のヒトラー信奉者のように振るまう現代ドイツ人などを指す。旅行者にとって重要なのは、ネオナチがドイツ人(アーリア人)や白人至上主義であり、元同盟相手である日本人だろうとお構いなしに排斥の対象と見做していることだ。実際、ドイツではアジア人へのネオナチの犯行とみられる暴行事件が多数発生しており、近年は中東系移民増加による軋轢もあって、ネオナチの数は増加傾向にあるといわれる。
ドイツに旅行する日本人としては気を付けたいところだが、日本にいるとなかなか情報が入ってこない。そこで、実体験として遭遇したことはあるか、危険度、旅行者が気を付けるべきことをドイツ・ベルリン在住日本人ライターがリポートする。
運が良ければほぼ出会うことのないネオナチ
(現地在住ライター Kanako K)ネオナチをイメージする身なりと言えば、スキンヘッドに黒の革ジャン、十字マークや拳マークのシンボリックなTシャツを着た人達ではないだろうか。稀にジャーマンシェパードといった力のありそうな黒い毛の犬を引き連れていることも。しかし、近年ではファッションのようにも捉えられているし、実際には筆者の在住しているベルリンの普段の生活中でネオナチの恐怖におびえることはほとんどない。
それでもネオナチの思想を持った人が多く住み注意が必要と聞くのは、ベルリンの東側に位置するリヒテンベルクという地区。以前、リヒテンベルクに住む日本人の友人宅へ訪ねた時、その警戒ぶりに初めてネオナチの存在に特別な感情を持つようになった。というのも、その友人によればまさにこのエリアではネオナチに遭遇する確率も高く、暴行されるという被害も起きているとのこと。
ベルリン市内をクルッと一周するSバーン(S-Bahn)という路線沿いにリヒテンベルク地区に接する駅がある。そのため、観光客なら知らず知らずにリヒテンベルク地区を観光しているということもある。しかし、危険な被害に遭うケースは夜10時以降、週末の酔ったネオナチに遭遇しなければ、ほとんど心配することはないだろう。
不運にも筆者はリヒテンベルク地区の隣の地区に住んでいるため、恐怖を感じるような出来事に遭遇した経験がある。それは帰宅の際、終電近くの電車に飛び乗ったところ、いかにもネオナチ風の集団と居合わせてしまった。彼らはボトルのビールを開けながら車内で異様な空気を放っていたが、リヒテンベルク辺りの駅で下車していったのでホッと胸をなでおろしていた。しかし、電車が発車し始めゆっくりと動き出したとき、筆者の座る窓側席に、車外ホームからビールのボトルが投げつけられたのだ。もちろん電車の強化ガラスのおかげで怪我は無かったが、無論、誰が投げつけてきたのかは想像は容易だ。
これらの経験を踏まえると、普段の生活でベルリン市内で恐怖に怯えることはほとんどないが、時間帯や地区によっては、お正月のおみくじで「凶」を引き当てるくらいの確立でネオナチに遭遇してしまう事もあるだろう。遭遇してしまった時の対処は、とにかくすぐ離れる事、視界に入れない事が一番ではないだろうか。