日本での映画興業収入ランキングでは、2015年、トップ10のうち6つがハリウッド映画であった。また、7つはアニメ映画であり、邦画の実写映画では「HERO」の一作品がランクインしたのみであった。自国の実写映画がトップ10の内、一つしかランクインしないというのは奇妙な気がしないでもない。他の国でも上位層はほぼハリウッドとアニメ作品が占めているのだろうか、それとも、自国映画が存在感を持っているのだろうか。海外在住の現地ライターがリポートする。

スポンサーリンク

目次

【イギリス】日本と同様、ハリウッド映画が席巻

(現地在住ライター バックリー佳菜子

筆者が住むイギリスでも興行収入ランキングにしてみると2015年トップ10のうち1つがアメリカとイギリスの合同制作映画だがそれ以外はすべてがアメリカ映画である。さらに特徴的なのは、トップ30の映画の中半数近くが子供向けアニメやディズニーが実写化した映画だということである。これにはイギリスの映画事情を垣間見ることができる。

第一に言語を翻訳する必要がないことからイギリスではハリウッド映画の公開日とほぼ同時に映画が公開されることが多く、DVD化も早い。またNetflixやAmazon Prime Videoのようなオンライン映画配信サービス上でも早く映画が公開されるため、大人向けの映画は映画館で映画を見るよりも家で見るというユーザーが多く、結果として興行収入ランキングではこのような映画がランキング下位になりやすい。

第二に、日本よりも映画のチケット料金が安く、特にファミリー向けの割引などが充実しているため、家族で楽しめる映画は映画館での興行収入が高くなりがちという理由があるだろう。興行収入別ではなく、イギリスの各新聞や映画評論家が選ぶ映画ランキングだと各国の映画が選ばれており(ジブリ映画ももちろん選ばれている)そのほとんどの映画がオンラインで見ることができる。つまりイギリスでは映画鑑賞と一口に言って劇場で見るだけが映画鑑賞ではなく、個人の好みやライフスタイルに合わせて幅広く選択できる余暇として認識されていると言えるだろう。

【フランス】映画発祥の地でもハリウッド映画優勢

(現地在住ライター 竹内真里

2015年の興行成績トップ10のうち、フランス映画は2作(うち1作はベルギーと共作)のみギリギリ下位にランクイン。他は「スターウォーズ」、「ミニオンズ」、スーパーヒーロー物などアメリカ映画で占められた。7月27日の週の観客動員数調べによると「ペット」が第1位。「グランドイリュージョン2」、「アイスエイジ5」など以下もアメリカ製が続く。

実際、見放題パスを利用して頻繁に映画を観に行くフランス人の40代の知人に聞くと「あまり選ばずになんでも観るほう。アメリカ映画も好き。単純で娯楽性が高いよね。でも私たち(ここ強調)フランスの映画は人生について深く考えさせられる作品が多い。日常に基づいたストーリーが多いのが魅力だけど、最近はウケを狙いすぎている作品が増えているね」とのこと。

パリにはこぢんまりした昔ながらの趣ある映画館も残っており、あまり宣伝のされていない外国の映画や不朽の名作などが上映されている。町を歩けばロケ地も発見できる。「この地区で映画の撮影を予定しており、撮影用のアパルトマンを探しています。求める部屋のスタイルは(中略)、貸して下さる方は連絡下さい」という張り紙が筆者の住むアパルトマンの建物入口にあった。興行成績で見ると確かにアメリカに押され気味だが、映画発祥の地として、フランス映画らしさが光る映画を作り続けて欲しいと願う。