海外留学時のルームメートや、ホームステイ時のホストファミリー、または海外の取引先等に、日本の食べ物を振る舞う場合際、どのようなものが喜ばれて、どのようなものが嫌がられるのか。例えば、日本の贈り物の定番である和菓子を嫌う欧米人はとても多い。欧米では豆を甘くする文化はなく、主食のイメージが強いためで、日本人にとって米を砂糖で似たお菓子という感覚に近い。これまで幾度となく外国人に日本の味を伝えてくる機会があったイギリスと韓国の現地在住日本人がリポートする
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【イギリス】好き嫌いは人によるので、事前に確認を
(現地在住ライター 竹内奈緒美)私が海外の人々に和食を振る舞ったのは、渡英直後から通っていた「英会話レッスン教室」の最終日に催された「お疲れ様パーティー」だった。先生はイギリス人だったが、生徒はハンガリー人、インド人、台湾人、ポーランド人など、国籍は様々だったため、生徒たちが持ち寄った母国料理の数々は大変バラエティに富んでいた。私はいろいろ迷った挙句、シンプルだが和食には欠かせない料理、「味噌汁」を振る舞った。初めて食べる味噌汁に皆ドキドキの様子だったが、美味しいと喜んでくれ、中でもインド人の生徒は自身が持ち寄ったピラウライスとの相性が良いと言っておかわりまでしてくれた。
ところが英系企業に努めていた頃、同僚だった年配の男性は味噌汁が好きではなかった。彼は以前、日本人である友人に和食をごちそうになったことがあり、どれもこれも美味しかったのだが、味噌汁だけはどうしてもダメだったそうだ。寿司も刺し身も問題なく食べられるのに、どういうわけか味噌汁の味も匂いも受け付けなかったらしい。
このように同じ料理であっても、喜ばれたり、そうでなかったりする。当たり前のことではあるが、食の好みは個人によって違うし、宗教的な理由で口にしない食材があることにも配慮が必要だ。また個人的には、ベジタリアンやヴィーガン、アレルギーのため、食材に注意が必要な人が日本より多い気がする。料理を振る舞う際には事前に食べられる食材を聞くなど心配りが必要だろう。
【韓国】醤油風味のきかせすぎに注意
(現地在住ライター キム・ハナ)
筆者の住んでいる韓国は、世界一日本食が浸透している国だと言っても過言ではないと思う。街中にも日本食を扱う居酒屋や定食屋は数多くある。
そんな日本食に馴染みのある韓国で、筆者が実際に作ってみて喜ばれた日本食はずばり「天ぷら」だ。実は、天ぷら自体は韓国でも高級で手の届かない日本食というわけではなく、屋台で食べられるほど気軽でメジャーな食べ物である。では、なぜ天ぷらが喜ばれたかというと、韓国と日本の天ぷらで決定的に違うのはその食感だ。日本の天ぷらは何よりもさくさく感が命だが、韓国の天ぷらは日本のそれよりも衣は柔らかめでさくさくしていない。私が一度さくさくの日本式の天ぷらを一度作ったとき、あまりの大絶賛ぶりに驚いた。
反対に喜ばれなかった料理は実はあまりない。前述したように韓国では日本食が浸透しており、食文化も他の外国に比べて近いためあまり抵抗がないようだ。しかし、日本食は味付けが「しょっぱい」というのはよく言われた。日本人の筆者の立場からしてみれば、味の濃い韓国のチゲや塩漬けして作るキムチのほうがよほどしょっぱいし塩分も多いように感じるのだが、韓国人の言っていた「しょっぱい」は、醤油風味がきつすぎるという意味だったようだ。たしかに韓国でも醤油は売っているが日本の物よりもさっぱりしている気がする。韓国人に日本食を作る際は、醤油を控えめにするとほとんどのものをおいしいと食べてもらえるのではないだろうか。