2016年8月8日午後、第125代天皇である今上天皇陛下の「お言葉」が発表された。お言葉の中で天皇陛下は「次第に進む身体の衰えを考慮すると、全身全霊で象徴の務めを果たすことが難しくなるのではないかと案じている」と述べられ、安倍首相や各党は重くお言葉を受け止めるとともに、「生前退位(譲位)」を認める皇室制度改正議論の開始を示唆している。日本国の象徴として世界各国で外交をされてきた陛下のお言葉について、海外ではどのように報じられ、どのように受け止められているのだろうか。海外の反応をHowTravel現地ライターがリポートする。
目次
生前退位を認めているイギリスでの反応
(現地在住ライター バックリー佳菜子)天皇制ではないものの王族を有するイギリスでは、日本の天皇陛下の生前退位のご意向発表のニュースには大きな関心が寄せられていると言って差し支えないであろう。お言葉が発表された際にはBBCニュースで速報として報じられ、スマートフォンアプリ内でも通知が一斉配信されたことからも、日本という遠い国の出来事ではありながら関心が高いことが現れている。
現在ではBBCニュース内でもこのニュースおよび日本の皇族に関する特集を組んでおり、自由に読むことができる。イギリスでは生前退位が認められており、現在のエリザベス女王の叔父にあたるエドワード8世が離婚歴のあるアメリカ人女性と結婚するために退位したことが有名であることから、イギリス国民は概ね生前退位に関してポジティブな印象をもっている人が多い。
今回の天皇陛下のご意向に関しても、陛下の意向を尊重し法改正すべきだろうというコメントをしているイギリス人がほとんどである。エリザベス女王もご高齢になっており、公務の際健康面を心配する声も多くなっていることからも、今回の天皇陛下のご意向に賛同し、自国の君主であるエリザベス女王に重ねあわせている人が多いというのが現地からの印象である。
国民へのお言葉発表は異例、ご年齡とご活動内容を強調
(現地在住ライター 竹内真里)
フランスでは同日夜20時からのニュース内で報じられた。「82歳の天皇陛下は退位(譲位)できないのだろうか?」のサブタイトルとともに約2分間にわたってこれまでのヒストリーをごく簡潔に紹介。学生時代や即位された当時、各地の行事への出席、被災地の訪問、そしてお言葉を読み上げる様子などが映し出された。
この他電子版ニュースによると、冬にはインフルエンザや肺炎を患われ、近頃2度の外科手術を受けられていること、82歳というご高齢でありながら2015年には外国からの要人のレセプションを270もこなされたこと、天皇陛下がこのようなかたちで国民に直接お言葉を発表するのは極めて異例であり、2011年の東日本大震災以来ということが強調されている。年齢による健康的な変化がありながらも公務を全力で行われ、国民に寄り添い続ける天皇陛下のご様子がフランス語圏の読者によく伝わる記事が配信されている。
フランス国内での反応を記した記事は見当たらないが、似たような退位(譲位)の例として第265代ローマ教皇ベネディクト16世や、75歳で退位(譲位)したオランダの前ベアトリクス王女の例を挙げている。また、退位(譲位)を可能にするために制度を見直し変えるべきだと日本国民の90%が天皇陛下のご意向を理解している、と伝えた。
HowTravel SNSアカウント