地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が話題となっている。日本では、(東日本大震災の影響もあるが)夏場の暖房の温度設定を高くしたり、クールビズを流行らせたり、ゴミのリサイクルを条例で徹底したりと、エコ関連の対策が国民レベルで広く受け入れられている。
一方、東南アジアでの寒いくらいの冷房設定や、欧米での分別されずにゴミ箱に放り込まれるペットボトル等をみていると、世界的にエコ対策の意識が高まっているのか疑問がある。実際のところどうなのか。海外在住ライターがリポートする。
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【フランス】政策は努力が見られるが、個人の意識レベルに差があり
(現地在住ライター 竹内真里)
パリでは昨年に続き第2回目の「ノーカーデー」が9月25日日曜に実施された。完全に車両の通行が禁止されている区域とそうでない区域に分けられ、時間は午前11時から午後6時まで、時速20キロメートル以下で走行などの条件が設けられていたが、配達車両や指定区域在住の住人、もちろん緊急車両は最優先で通行可能だ。当日夜のニュースでは「普段より空気が澄んでいてすばらしい」と満足げにインタビューに答える通行人もいれば、「目的地はすぐそこなのに通れないんだ」と少々イライラ気味のドライバーの声が聞かれた。また、普段の街の風景では、100パーセント導入ではないものの電力のみで走るバスが着実に増えており、乗用車もハイブリッド車をたまに見かける。
ゴミの分別に関しては、パリ市民に対してだいぶ意識の改善を促しているように思う。数ヶ月前に市から分別ガイドが配布され、各アパルトマンの指定の場所には蓋の部分が色違いのゴミ箱が置かれている。ビン類は白色、紙類や缶、プラスチック類は黄色、それ以外の燃えるゴミは緑色のゴミ箱に分けて出す。日本と違うのはビンや缶をきれいに洗わないで出してもよいという点だ。
ただ、この分別もいったいどれぐらいの人が実際に行っているかはわからない。筆者の住むアパルトマンの管理人は「生ゴミもプラスチックもビンも全部一緒くたになってるわ。いったい誰なんだか、まったくもう!」とよく文句を言っている。
自治体によってルールは異なるものの、南仏在住の義父母などは一切分別をしないで何もかも一つのゴミ箱に捨てている。「それはわざわざ自分がすべきことではなく、ゴミ・清掃係の仕事だ」という考えの人も存在する。
もうひとつ身近な事例でいうと、国は2016年7月1日からレジ袋使用を全面的に禁止し、客はエコバッグを持参している。もしエコバックを忘れてもレジのそばに買い物袋(有料)が用意されているが、多くは何度も使用可能なじょうぶな袋で、すぐに使い捨てされる薄いビニール袋ではない。2017年1月からは野菜などの量り売りなどに使用するビニール袋類も禁止されるとのことで、政策からは積極的に環境問題に取り組む姿勢が感じられる。
【アメリカ】着実に意識は高まりつつあるがトランプ当選に不安の声も
(現地在住ライター 長谷川サツキ)
中国に次いで二酸化炭素排出量が世界第二位のアメリカ。「大量消費こそ豊かさの象徴」との概念を根底にもつアメリカ人とって、長らく地球温暖化の問題は自分とは無関係な遠くの出来事として認識している人が多かった。しかしアメリカ最高裁は2007年に二酸化炭素を大気汚染物質として法律で規制を義務付けるべきとの判決を下し、オバマ大統領は任期最後の大仕事として2015年のバリ協定に批准。石炭や石油などの温暖効果ガスに代わってバイオ燃料の生産が進み、今では軍を含む様々な分野で実用化されている。
市民のエコ対策への意識も年を追うごとに高まってきている。私が渡米した2005年は皆ペットボトルも家電も全て1つのゴミ箱に放り込んでいたが、今ではリサイクルゴミ箱はどこでも見かけるようになった。ハイブリット車や電気自動車が増え、リサイクル品であることをアピールした商品が増え、ペットボトルを使用しないマイボトルも浸透。
今まで地球温暖化に拍車をかけてきたアメリカにこのような変化が現れたのは素晴らしいことだと思う。しかしながら温暖化対策が盛り上がってきたタイミングで、パリ協定離脱を宣言していたトランプが大統領に当選。この先アメリカの環境対策がどのような道筋をたどっていくのか不安を覚える声は多い。
【コートジボワール】大気汚染大国コートジボワール!
(現地在住ライター Sanogo Miyu)
「母なる大地、自然豊かなアフリカ」のイメージがあるだろうが、アフリカ大陸の大気汚染は深刻な問題である。コートジボワールもWHOから大気汚染国のレッテルを貼られているのだ。
主な原因は火力発電(石炭)、排気ガス、廃棄物の燃焼などが挙げられている。都市アビジャンは黒煙や白煙を排出しながら走る車社会であり、町の至る所では廃棄物を燃やす黒煙が上がっている。呼吸器系の疾患での死亡率も高い。私もこちらに住み始めて軽い喘息を患った事がある。人口の半数以上を占める低所得層の家庭では炭を使い料理をし、少しでも安い経費で車を維持する為に機械オイルや使い古したオイルを使い車の整備をする。
その一方、富裕層の家庭や政府機関オフィスではエアコンを一日中フル稼働し、設定温度は16度!いつも空気が霞んでいるアビジャン、空気汚染は一目瞭然だ。道路沿いの我が家では窓を開ける事はない。しかし、国民の危機感は一切感じられないのが現実である。