日本ではお弁当の手抜きが許されない雰囲気がある。栄養バランスが考えてある、品数が多いといったレベルではなく、キャラクターを形作ったキャラ弁や、食べる前に温めるグッズなど、限度を知らない凝りようだ。
このような状況は日本だけなのだろうか。海外でのお弁当事情を現地在住ライターがリポートする。
目次
【イギリス】母親フレンドリーなイギリス式弁当
(現地在住ライター 竹内奈緒美)イギリスの学校では全員が給食を食べるような決まりはなく、弁当持参が圧倒的に多い。今回は私が平日毎朝子供に作っているイギリス式弁当を紹介する。
まず用意するのは四角いタッパー。そこにサンドイッチ、パックジュース、小さいフルーツもしくはヨーグルトを入れる。そしてさらに、チョコレート菓子とポテトチップスが入る。弁当にお菓子ぃ?と最初は驚いたが、これは多くのママ友がメニューとして挙げていたので採用した。
このように手間いらずで母親フレンドリーなイギリス式弁当だが、一つ感心する習慣がある。それは誕生日の弁当に添えるランチレター。子供はそのメッセージカードを喜び、周りの友達は羨み祝福する。キャラ弁でなくても親子の愛情が伝わる好例だと言えよう。
【台湾】台湾人にとって日本人ママの弁当は憧れ?
(現地在住ライター 山田純)
台湾人ママに必ずと言っていいほど聞かれることがある。「日本人のママは本当にすごい!どうしてあんなに可愛いお弁当が作れるの?」、「毎朝早く起きてお弁当作るんでしょう?大変だよね?」、「日本人の主婦は皆あんなすごいお弁当が作れるの?」そして最後に一言、「あぁ台湾人でよかったぁ」。
つまり、台湾人は日本人のように手作りのお弁当を作る(食べる)機会が少ないのだ。台湾は外食文化がかなり栄えている。朝食から外食するのは当たり前。弁当屋は街中に溢れている。メインがご飯の上にドンと載り、副菜が三種類ほど選べるようなお弁当が200円ほどで買えるのだ。朝早く起きて作るのが馬鹿らしくなるのは当然だ。
しかし、筆者が台湾人ママに聞かれるように、日本人の主婦が可愛い弁当や栄養満点の弁当を作る、ということを多くの台湾人は知っている。台北などの都会では日本人ママのお料理教室やお弁当教室がかなり人気で、台湾で料理本を出版している日本人ママさえいる。
筆者の住む地域では以前は無料だった学校の給食が食料廃棄軽減のため今年から有料化になった。それに伴い弁当を持参する、という選択肢が増えた。共働きの多い台湾では親の負担が増える等、否定的な意見もあるが、今後そういった取り組みを行う自治体も増えるのではないかと予想される。趣味のためでなく、家族の健康のためにお弁当作りを学ぼうという台湾の主婦も増えてくるのではないだろうか。
【アメリカ】お弁当というより素材…なアメリカのランチ事情
(現地在住ライター 長谷川サツキ)日本のキャラ弁をアメリカ人に見せると「こんなの一般人が作れるはずない」と言う。日本の定番のお弁当を見せると「なんて豪華!とても手が込んでいるわね」と感心する。それもそのはず、アメリカ人のお弁当は日本人から見たら何かの冗談かと思う程シンプルなのだ。
アメリカでのお弁当箱といえばタッパーもしくはジップロック。そこにチーズとハムを挟んだサンドイッチがポンと入っているのが定番だ。ピーナッツバターとイチゴジャムのサンドイッチもよく見かける。それにリンゴ1個、もしくはバナナ1本を添えてお弁当が完成。野菜が足りないわ!と思う人は生のニンジンかセロリを入れる。野菜代わりにポテトチップスを加える人もいる。ちなみに給食もこれらと大差ない。何というかアメリカの弁当は、弁当というよりもはや「素材」といった感じなのだ。
ちなみにそんなお弁当でも用意するのが面倒、という人のために「ランチャブル」という商品がある。どこのスーパーやコンビニでも手に入るランチャブルのメニューはいくつか種類があるが、定番はクラッカー8枚に同サイズのチーズとハムのセットだ。ボリュームはおつまみ並み。クラッカーの代わりにオレオクッキーが入ってるセットもある。
日本でお弁当作りに悩んでいる人は、ぜひ一度アメリカ人のお弁当の写真を検索してみてほしい。肩の力が抜けて、自分のお弁当に自信が持てるようになること請け合いだ。
【フランス】サンドイッチにポテトチップを欠かさない
(現地在住ライター 竹内真里)
フランスは公立の場合、幼稚園から給食がある。お弁当を作る機会は遠足など特別な機会のみ、年に数回あるぐらいだ。ここでは幼稚園児の典型的なお弁当について書く。
現地の子が持参するのは、ハムやチーズをはさんだサンドイッチ。中身はだいたいこの2種がメジャーだ。使われているのは食パンではなく、フランスパンか、フランスパンのように細長いが、表面がかたくなく、スーパーで買える日持ちのするパン。それにポテトチップと、コンポート。これはリンゴなどの果物がすりつぶされた状態でビニール製の小袋に入っており、キャップを開けて吸って飲めるようになっている。リンゴを丸ごと1個まるかじりの子もいた。飲み物は小ぶりのペットボトルに入った水を持参している子が多い。フォークやナイフ、スプーンなどのセットもなく、お弁当箱も水筒もなく、食後出るゴミを捨てればさらに身軽である。敷物はタオルを用意してきている子が数人いたが、だいたいは芝生の上に直に座るか、上着を敷物がわりにしている。
筆者は日本風のお弁当を子どもに持たせた。中身は卵焼き、ウインナーソーセージ、ミニトマト、いんげんの胡麻和え、おにぎり、カットしたリンゴだ。我が子は「その黒いのと、つぶつぶ(海苔やふりかけ)何?」「これ(リンゴにさしてあるキャラクターもののカラフルなピック)何?」と質問された。パリでBENTOの人気が出つつも、幼い子どもたちにはまだ未知らしい。
ちなみに大人では、仕事のお昼用に家でお弁当を準備していく人はいないようだ。外食、テイクアウェイ、安価な社員食堂を利用できる会社もあるので、大半が外で済ませているように思う。
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