イギリスは欧州で一番日本人が多く住んでいる街であり、約7万人が在住している。EU圏へのアクセスも良いことから日本企業の支社も多く、また大学のレベルも高いことから留学生も多いため、イギリスを訪れる日本人は後を絶たない。日本人が多いことから、日本人コミュニティも発達しており、日本人にとっては最も住みやすい国の一つと言っても過言ではない。ただし、いざイギリスに移住するとなると、言語、ビザ、仕事、文化、家族・子供、お金まで、考えることは盛りだくさんだ。この記事では、ビザの取り方から仕事の見つけ方までをご紹介する。そして様々なハードルを乗り越えてイギリスに移住した現地在住日本人に、移住を決めた理由と、移住してみて実際どうだったかを聞いてみた。

イギリスで仕事を見つけて就職・転職する方法を解説【体験談有り】
イギリスの物価情報

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目次

イギリスのビザの種類

(HowTravel編集部)
イギリスのビザ(Anastasia Kamysheva / Shutterstock.com)

●学生ビザ

・短期留学生資格(Short Term Student)
イギリスの語学学校に通う人等、6カ月未満の留学については、特別な学生ビザの取得手続きは必要ない。空港の入国審査官に対し、入学する予定の学校の入学許可証、英文預金残高証明書、出国する際の航空券かe-ticketのコピーを見せれば良い。6カ月の滞在が許可される訳ではなく、あくまでも学校の在籍期間を勘案して入国審査官が滞在日数を決定するため、学校を卒業してしばらくイギリス旅行をという場合は注意が必要だ。また、この資格でイギリスに入国した場合、アルバイトはできない。

・長期留学者向け資格Tier4ビザ
イギリスの大学や大学院に通う場合はTier4と言われるビザを取得する必要がある。このビザがあれば、3年または5年間イギリスに滞在することが可能で、週15時間以上の授業受講が可能になる。ビザが切れそうになれば1年毎の延長が可能だ。無事現地の大学を卒業した後は、イギリスで仕事を探すことを想定した2年間の滞在許可と1年間の就労許可が得られる、将来的にイギリスに移住したい人に取っては素晴らしいビザだ。なお、このビザでイギリスに入国した場合は通常週10時間まで、休暇中は無制限のアルバイトが認められる。

取得方法のためには、イギリス政府の認可校で週15時間以上授業を受ける証明と、現地での十分な滞在費を持つ証明が必要だ。求められる資金力は9カ月未満滞在で授業料+600-800ポンド、9カ月以上滞在で初年度授業料+5400-7200ポンドと非常に高額だ。また、英語能力の証明も必要で、試験の種類は幾つかあるが、日本で受験可能なのはIELTSのみで、TOEICやTOEFLは使えない。取らなければいけない点数は大学なのか、大学院なのか等によっても異なる。

詳細は以下のイギリス政府サイトを参照。
https://www.gov.uk/tier-4-general-visa/overview

●就労ビザ

イギリスで仕事を見つけて就職・転職する方法を解説【体験談有り】

●婚姻ビザ

・イギリス人と婚約した人向けFiance / Fiancee Visa
イギリス人と婚約し、6カ月以内に結婚する意志のある人向けのビザ。一緒に住む意思や、二人で暮らしていくのに十分な資金がある証明をする必要はある。

・イギリス人と結婚した人向け
イギリスの市民かイギリスの永住者と結婚した場合は、英語力やイギリス人配偶者が£18,600以上の年収があることを証明できれば配偶者ビザを取得することができる(合算でも良い)。

詳細は以下のイギリス政府サイトを参照。
https://www.gov.uk/join-family-in-uk

●永住権

・ILR(indefinite leave to remain)
10年以上イギリスに滞在している人や、2年以上イギリスでの婚姻関係を続けている人については永住権を取得することができる。その際、イギリス一般常識テストと英語力の証明が求められる。親族の呼び寄せも可能だが、昨今、爆発的に外国人労働者が増え、軋轢が増していることもあって難易度は高い。

イギリスの仕事について

●英語力

英語力は当然必要だが、そのレベルは志望する業界による。書類作成や会話がメインとなるような仕事であれば、英検1級やTOEIC900点等という指標は全く役に立たないと思った方が良い。日本で学んだ、テストで満点が取れる英語を突き詰めても、現地のビジネスでは使えないし、就職活動でも語学力を証明する材料とはならない。システムエンジニアや技術者のような仕事であれば英語の要求はぐっと下がる。また、全く英語に自信がないような人は、日本企業の現地支社や、イギリス企業と日本企業のパイプ役を果たすような仕事に応募するのがお勧めだ。

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イギリスの物価について


イギリスのスーパーで買い物(1000 Words / Shutterstock.com)
イギリスはとにかく物価の高い国だ。2016年のEU離脱を受けて数カ月の間に30%程度ポンドが下がったとは言え、移住してポンド建てで給料を貰おうというのであれば関係のない話でむしろ、たまの日本への帰国の負担が増しただけかもしれない。

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イギリスで仕事をする日本人の体験談

●やりたい事を突き詰めていったら移住という選択肢になった

(現地在住ライター バックリー佳菜子

約10年前、私は日本の大学を卒業してから都内で社内通訳として働いていた。それなりにやりがいはあったが、この仕事をしていても将来につながるキャリアにはならないという思いが強かった。

その年運よくイギリスのワーキングホリデービザを取得できたこともあり、イギリスで大学に入りなおし、働きながら経営学を学ぶことに決め渡英。パートタイムで働きながら、大学の定時制コースに通った。コース修了後はパートタイムで働いていた英系ウェブサイトの会社から就労ビザを出してもらい正社員となり、その後永住権も取得。

イギリスに来てからは一貫してマーケティング・広告関連の仕事を続けており、キャリアの選択として間違っていなかったと思っている。もちろんイギリスで働くということは、英語力・文化理解力があるのは当然として、実力主義社会なので成果が出せない人はすぐにクビになる、ボーナスなども実力次第というシビアな面もある。しかし日本で働いていた以上にやりたい仕事をできるのは移住したからこそであると考えている。

私のケースでは海外に移住するのが目的ではなく、やりたい仕事でキャリアを積むということを中心に動いた結果、最終的にイギリスに永住するという形になったというケースであるが、これから海外に移住したいと考えている方には、ぜひ海外移住後にどんなことをしたいのか具体的な目標を決めてから準備をしてもらいたいと思う。

●何にも代えがたいありがたい経験

(現地在住ライター 竹内奈緒美

私は家族の仕事の関係で渡英したのだが、居住予定期間は2年と聞いていたため、あまり深く考えずに渡英を決めた。渡英前には英会話レッスンや渡航前準備講座の受講、住民票抹消や国際免許証発行といった各種手続きを、転居準備と並行して行った。短い準備期間だったため、目が回るような忙しさだったが、なんとか完遂。家族は仕事の立ち上げのため、先に渡英し、私は子供と共に実家に身を寄せることになった。一ヶ月後、住居や子供の通学する学校が決定したため、私たちもイギリスへ向かった。

しばらく暮らして気づいた日英の大きな相違点は、緑と子供の多さだった。どんな大きな街でも必ず街路樹があり、少しでも離れると緑豊かな土地が広がる。家々のよく手入れされた芝生の前庭には花が咲き、その側をベビーカーを押しながら親が小さな子と共に歩いている。日本より色鮮やかで活気に満ちた日常がイギリスにはあった。

予定居住期間満了の頃、もう少しイギリスで暮らそうと考え、ビザ取得を目指すことになった。必要書類を揃えるべく、何度も専門家の元へ足を運び、半年にわたる煩雑な手続きの末、無事ビザを取得した。話には聞いていたが、嘘偽りなく、ビザ取得は体力的・精神的に本当に疲弊する体験だった。

当たり前にある外国人差別、階級社会、日本人とは違うメンタリティなど、渡英後15年経った今でも憤ることは度々あるが、海外に移住して良かったと思うことももちろんある。それは、イギリスで子育てができたことだ。一人っ子家庭が少ないイギリスでは、兄姉が弟妹の面倒をみることが普通であり、まるで「古き良き時代の日本」のように、兄弟姉妹の繋がりが非常に強い。現代のイギリスに暮らしながら昔の日本のような環境で子育てできることは、有事の際に助け合える子どもたちであってほしいと願う私にとって、何にも代えがたいありがたい経験となっている。