日本を除く国々の中で、イギリスは日本人が4番目に多い国であり、約7万人の日本人が住んでいる。世界最大級の金融街であるシティを要し、EU圏へのアクセスも良いことから、イギリスに支社を持つ日本企業は多い。また、留学生の行き先としても人気な国だ。
永住してイギリスで働く日本人も多いが、英語が完璧に喋れたり、経歴や能力がずば抜けて秀でている場合の除くと、日本人がイギリスで働くのは容易ではない。
この記事では、イギリスで就職するためにはどうすればいいのか、難しいと言われているビザの申請にはなにが必要なのかなどを説明していく。また、実際にイギリスで仕事をしている現地在住日本人に、海外で仕事を見つけるためにしたこと、待遇、日本との違いを聞いてみた。
目次
イギリスの仕事事情
(HowTravel編集部)
●現在の求人マーケット事情
イギリスは世界的に見ても求職者たちにとって人気の高い国だ。故に、日本人が職を得るのはなかなか難しい。一時期よりは回復したものの、今もなお失業率は低いとは言えず、イギリスの政府や企業にとって、まずはイギリス人やイギリスの永住権を持った人々を雇用することが再優先事項となっている。
最も一般的な就労ビザを取得するには、スポンサーライセンスを持っている企業に就職を決め、スポンサーシップを取得してもらうことが必須となる。これには手間も費用もかかるので、企業側はいっそう日本人の採用に消極的になる。イギリスで働くには、政府や企業にあなたを雇うべきだと納得させなければならない。それは、日本の文化や日本語を活かした仕事に就く場合も同じことだ。
あるいは、イギリスに支店を持つ会社に就職し、駐在員となって渡英するのも一つの手段だろう。しかしながら、イギリスでの勤務は人気が高く、それなりの役職が求められる。いずれにせよ、イギリスで長期的に働くには確かな技術と能力が必要になる。まずは語学留学をしながらアルバイトをしたり、ワーキングホリデーを利用して働いてみることも視野に入れよう。
●給与や労働時間等の条件
①給与
イギリスは年齢によって時給が異なり、基本的には年齢が上がれば上がるほど時給も上がる。なお、東京の時給は2019年現在で年齢に関わらず985円となっている。
年齢 | 最低賃金 |
---|---|
18歳未満 | 4.35ポンド(約630円) |
18歳から20歳 | 6.15ポンド(約900円) |
21歳から24歳 | 7.70ポンド(約1,120円) |
25歳以上 | 8.21ポンド(約1,190円) |
※2019年4月以降
(参照:英国政府ウェブサイト)
また、正社員についても年齢に応じて平均年収は異なる。ボーナスが支給されることもほぼない。所得税は年収に応じた額を払う。
日本と同様、イギリスでも医者や弁護士、パイロットなど空港関連の職種は高収入である。こういった職種に加え、実は近年IT関係の職種も高収入となっている。IT業界は常に人材不足。それはイギリスも例外ではなく、詳しくは後述するが、システムエンジニアなど、技術職にはビザも発給されやすい。ソフトウェアエンジニアの平均年収は45,000ポンド程度(約650万円)と、かなり好条件なのがわかる。日本ですでにIT業界の社員として活躍している方は、ぜひイギリスでの就職も前向きに検討してほしい。
その一方で、カフェテリアやアパレルショップなど、特別なスキルがなくとも就職しやすい職種の給与は最低賃金であることが多く、物価の高いイギリス、特にロンドンで掛け持ちも視野に入れないと生活が難しい。
②勤務形態
労働時間は日本とほぼ同じだが、始業時間、終業時間にはかなり柔軟性がある。よほどの緊急時を除いて残業は基本的にしない。それは仕事が少ないからではなく、仕事は勤務時間内にきっちりと終わらせ、プライベートを充実させようという考え方が主流だからだ。
金曜日になると、定時よりも小一時間早く帰宅する人も少なくないという。休暇も取りやすく、連続して長い有給を取得し、バカンスを楽しむことも可能だ。効率的、かつ集中的に仕事をこなす力が必要となるが、その分、あなたの人生はいっそう豊かになるだろう。
③福利厚生
有給休暇や福利厚生制度が充実している反面、住宅費や交通費が支給されることはない。家賃、交通費は日本より高く、特に交通費は通勤時間帯が最も高いため、給与からこれらをやりくりする工夫を考えなければならないだろう。
イギリスで仕事をするうえで必要な能力
日本と違い、イギリスには「新卒」という考え方がない。イギリスの大学生のほとんどは在学中に本格的なインターンシップを行い、その経験や内容が企業に評価されることになる。インターンシップ先で能力を買われ、そのまま就職するというパターンも少なくない。基本的には、大学時代に学んだ内容を最大限活かせる仕事に就くことになる。
転職する場合も、全く違う仕事に変えるのではなく、前職でのキャリアを活かしたジョブチェンジを行うのが主流だ。こういった背景があるため、「新卒」、「中途」に限らず、イギリスでは即戦力が求められる。入社後、手取り足取り仕事を教えてもらえるとは思わないほうがいい。
入社することができても、実績が伴わなければすぐに契約を解除される。その点は日本よりもシビアだと思っておいたほうがいい。また、転職も活発で、よりよい条件や環境を求めて、多くの人は3年に1度くらいのペースで職場を変える。
●語学力
言わずもがな、イギリスの母国語は英語である。英語といえば日本ではTOEICやTOEFLが有名だが、イギリスでは全く役に立たない。もちろん、語学力が全てではないが、最低限、英語でスムーズにコミュニケーションをとれる必要はある。対面中はもちろんのこと、電話での受け答えもできなければならないので、ネイティブであるかどうかよりも、実践的な英語が使いこなせるかどうかが重要だと言えるだろう。
その一方で、ビザの申請には英語力を証明することが必要になるので、CEFRのB1、またはB2以上のレベルに達しておこう。CEFRとは「Common European Framework of Reference for Languages」の略で、「ヨーロッパ言語共通参照枠」と訳される。つまり、英語の習得レベルのことだ。詳しくは下図を参照のこと。
(参照:文部科学省)
●学歴
イギリスは学歴社会である。前述したとおり、多くの場合は大学で学んだことを仕事に活かすことになる。そのため、大学を卒業している場合は自分がどんなことを学んできたが説明してできる方がいい。大学名に関しては、イギリスの大学、または英語で授業を行っている大学でないと意味がないので、気にしなくていい。
●職歴
即戦力が求められるので、ある方が望ましい。特に、希望先の職種と同じ職歴があるとなおいい。これは、日本での職歴で構わないし、社名は関係ない。インターンシップの経験でもいいだろう。絶対になければならないというわけではないが、具体的な職歴はあなたの就職活動を大いに助けるだろう。
イギリスでの仕事の見つけ方
(baranq / Shutterstock.com)
●仕事の探し方
①Linkedinなど、SNSを使う
「Linkedin」とは、ビジネス用のSNSのことだ。学歴や職歴を英語で記載しておくと、企業から直接スカウトが来ることもある。日本ではあまりメジャーではないが、海外では「Linkedinに登録していなければビジネスの世界に存在していないのと同じこと」と言われるくらいメジャーだ。
イギリスでの就職を成功させるためには人脈作りも重要なファクターとなる。就職活動中に限らず就職後も使うことになるので、まずは登録しよう。「Linkedin」だけでなく、TwitterやFacebookを活用するのも有効的だ。気になる企業や経営者がいたら、自分から能動的にどんどんアピールしていこう。
②イギリスの求人サイトを使う
日系企業以外の求人を探したいならこれらのサイト。求人情報が英語で書かれている。
・Gumtree
・Monster
・reed.co.uk
・totaljobs
③日本人向けのコミュニティサイトを使う
日本向けコミュニティサイトでは、現地在住日本人や日本企業の求人が多数出ている。ただし、既に就労ビザを取得済みの人を対象にした案件も多いので注意。
・MixB
・ニュースダイジェスト
・ジャーニーOnline
・パンドラ
④駐在員になる
駐在員はビザも取得しやすい。まずはイギリスの駐在に強い会社に就職するのもひとつの手だろう。
⑤転職エージェントに相談する
現地の求人サイトや、現地在住日本人向けの情報サイトで求人情報を探すことで、理想とする就職先が見つかる可能性は大いにある。しかし、それらの求人情報は自国民、またはすでに永住権や就労ビザを取得している人が対象である場合が多く、まだビザを取得していない人や、イギリスでの就職活動の知識が乏しい人には難易度が高いケースがほとんどだ。
そこでおすすめしたいのが、転職エージェントに相談するという方法だ。経歴やスキル、希望の条件や将来の展望に合った求人情報を提供してくれるだけでなく、経験豊富なエージェントであれば、履歴書の添削から面接対策を行ってくれるだけでなく、ビザの取得までサポートしてくれることもある。
以下の記事で、海外案件に強いお勧めの転職エージェントを紹介しているので、ぜひ参考にして欲しい。
●日本人が働きやすい職種
・日本食レストラン
経営者が日本人であることも多く、積極的に日本人の採用を行っているところも多い。ただし、競争率は高い。
・ホテル
日本人観光客への対応が主な仕事となる。ネイティブレベルの英語、そして正しくわかりやすい日本語を話せる力を持っているといいだろう。
・日系企業
特にロンドンには多くの日系企業が進出している。イギリス的な働き方ができない場合もあるかもしれないが、イギリスで働くという希望は叶えられる。
・カフェテリア
チェーン店も多く、高い語学力を求められないケースもある。英語の勉強をしながらまずは働いてみたい、という場合におすすめだ。
・パブ
イギリスには数多くのパブがある。カフェテリアに比べると語学力へのハードルは上がるが、イギリスらしい場所で仕事をするには向いている。
●希望の仕事が見つかったら(面接や給与交渉)
まずはCVと呼ばれる履歴書を用意しよう。A4サイズであることと、1枚の中にわかりやすく書かれていることが求められるが、日本と違い、決まった用紙や書き方はない。手書き、誤字脱字はNGなので注意しよう。
書き終わったら、必ずネイティブに確認してもらったほうがいい。また、履歴書とは別に、カバーレターも必要になる。カバーレーターは、履歴書と一緒に同封する挨拶状のようなものだ。基本的に履歴書よりも先に読まれることになるので、内容はもちろん、レイアウトセンスも試される。
<カバーレターに記載する内容の例>
・名前、住所、電話番号
・手紙を書いた日にち
・志望理由
・希望する職種
・自己PR
・面接の依頼
・お礼
など
<CVに記載する内容の例>
・名前、住所、生年月日、電話番号、メールアドレス
・職歴
・学歴
・資格、スキル
など
CVが通ったら、いよいよ面接だ。面接では、なぜ、企業側があなたを雇わなければならないのかをしっかりとアピールしよう。イギリスだからといって特別な質問がされるわけではなく、面接での質問内容は日本と同じようなものだと思っておいていい。
面接の際に希望給与額を聞かれることがほとんどなので、事前に給与の相場を調べておこう。その際、相手よりも先に希望の給与額を言うのは避けたい。あなたが思っている以上の額を企業側が考えている可能性もあるので、先に提示してもらうようにしよう。
他社も受けている場合は他社からのオファー金額を提示したり、自分が企業側にもたらすことのできるメリットを積極的に伝えるなどして、希望する給与額をもらえるようにしよう。
就労ビザについて
●就労ビザの種類
イギリスは労働条件や環境が良く、アメリカと並んで外国人の就職先として最も人気が高い。イギリスに限った話ではないが、ビザを取得するのはかなり難しいことを認識しておこう。
その種類や内容、条件もユニークで、2008年からポイント制度(Points Based System:PBS)が導入され、大きく5種類に分類されている「Tier」ごとに必要なポイントが定められている。何をすればどれだけポイントが貯まるのかについては非常に細かいルールがあるため、公式サイトを参照して欲しい。
ここでは、イギリスで働きたい日本人が取得することになる主なビザであろう5種類のビザについて説明する。
ビザの種類 | 概要 | 公式説明(英語) |
---|---|---|
Tier 1 | イギリスに貢献できる人を対象にしたビザ。 | 高度技能者 投資家 起業家 大学卒業生起業家 |
Tier 2 – General | 最も一般的な就労ビザ。 | 詳細 |
Tier 2 – Intra-company Transfer | 駐在者ビザ。 | 詳細 |
Tier 4 – Student Visa | 留学生ビザ。 | 詳細 |
Tier 5 – Youth Mobility Scheme | ワーキングホリデービザ。 | 詳細 |
①Tier 1
イギリスに大きく貢献すると判断できる高度技能者、投資家、起業家、大学卒業生起業家を対象としたビザで、年間で日本人が取得している件数は数十件に満たず、ハードルが高いビザである。
・高度技術者(Exceptional Talent)
特定の分野において秀でた技能を持つ人材が対象。イギリスが認定している機関からの推薦が必須となる。また、この推薦は年ごとに上限が設けられている。
・投資家(Investor)
イギリスで投資をする場合に必要となるビザ。200万ポンド(約2億9千万円)以上の資金証明が必須。200万ポンド以上の資金証明ができればビザがおりる、かつ英語力を証明する必要はないので、資金証明のみで申請ができるビザと言える。
・起業家(Entrepreneur)
20万ポンド(約2千900万円)以上の資金証明が必要。英語力はCEFRのB1レベル以上を証明する必要がある。
・大学卒業生起業家(Graduate Entrepreneur)
英語力はCEFRのB1レベル以上を証明する必要がある。大前提として、イギリス国内の高等教育機関を卒業している、またはイギリスが認定している機関からの推薦を得ていることが必須となる。
②Tier 2 – General
最も一般的な就労ビザ。一定以上の職位と給与が与えられる管理職レベル以上の仕事(詳細はこちら)、あるいはイギリス政府が定めた労働者が足りていない仕事、「Shortage occupation list」(詳細はこちら)に従事する者が取得することが前提である。
Shortage occupation list」に掲載されているのは各種技術職(グラフィックデザイナーやソフトウェア開発の専門家など)、医療関係、シェフなどで、いわゆる事務や営業、企画など、文系の仕事はほぼ含まれていない。日本人がイギリスで非技術系の職に就くのは至難の業と言えるが、年間で日本人が取得している件数は数百件とTier 1よりはハードルが低いとも言える。
特に、「Shortage occupation list」に掲載されている仕事に関しては政府も企業も人材を求めているで、比較的ビザを取得しやすい。英語力はCEFRのB1レベル以上の証明が必要。ただし、英語で授業をする大学を卒業していればそれが英語力の証明になるので、試験を受ける必要はない。
なお、「Certificate of sponsorship」(スポンサーシップ)、通称CoSを企業側に取得してもらうことがビザを申請する必須条件のひとつなので、まず第一にスポンサーライセンスを持っている企業から内定をもらわなければならない。
また、「Shortage occupation list」に掲載されている職種以外の求人の場合、一定期間、最低でも28日以上その企業が求人を行っていた、という証明も必要になる。これは「Resident Labour Market Test(居住者労働市場テスト)」と呼ばれている。
なぜならば、イギリスにおける優先的な雇用者はあくまでイギリス人や永住権を持った人なので、なぜ、イギリス人や永住権を持った人ではなく外国人を雇わなければならないのかを、企業は政府に説明しなければならないからだ。
③Tier 2 – Intra-company Transfer
「Intra-company Transfer」とは企業内転勤者のこと。つまり、駐在者向けのビザである。このビザは取得が容易で、年間で日本人が取得している件数は1,000件を超える。この件数は一般向けの就労ビザ、ワーキングホリデービザよりも多い。
英語力の証明をする必要はない。ある程度の貯金額の証明が必要だったり(スポンサーシップの評価が高ければその限りではない)、当然提出しなければならない書類もあるが、会社が全面的にアポートしてくれるはずなので気にしなくてよいだろう。申請数の制限もない。ビザの取得よりも、日本国内で駐在員に選ばれる方が難しいと言える。
④Tier 4 – Student Visa
留学生向けのビザ。イギリスでは、留学中にアルバイトやインターンシップをすることが許可されている。ただし、語学学校の生徒は対象外なので注意。学期中は最大週20時間、休暇中はフルタイムでの勤務が可能。別途就労ビザを取得する必要がないので、短期間でもいいからイギリスで働いてみたい、という人にはおすすめだ。
ただし、アメリカやカナダにあるような、留学後に申請できる就労ビザはないので、留学後もイギリスで働きたい場合には、改めてTier 2などのビザを申請する必要がある。英語力は学校によって異なるが、CEFRのB1かB2以上が求められる。
⑤Tier 5 – Youth Mobility Scheme
いわゆるワーキングホリデービザのこと。18歳から30歳までが対象となる。滞在期間中に31歳になるのは問題ない。申請条件は日本国籍などワーキングホリデーが許可されている国籍であることと、貯金が1,890ポンド(約27万円)あること、それからイギリスのワーキングホリデーに参加したことがないこと、とかなりゆるい上に2年間もイギリスに滞在し、働くことができるので、非常に人気が高く、毎年抽選で決められる。
当選してからビザの申請を行うことができるようになる。日本人向けの申請枠1,000人に対して1万人以上の応募が集まるとも言われており、取得できるかどうかは運次第と言わざるを得ない。運よく取得することができたら、現地で働きながら今後の就職先についてリサーチすることもできるので、将来的に長期でイギリスで働きたい場合はぜひチャレンジしたいところだ。
一点気をつけたいのが、イギリスにおけるワーキングホリデーは働くことが大前提なので、事前に仕事先を見つけておこう。そうしないと、観光ビザに切り替えられてしまうケースもあるので要注意。
●就労ビザの取得方法
取得できる人が極端に少ないTier 1、会社が助けてくれるTier 2 – Intra-company Transferは省く。気をつけたいのは、すでに取得しているビザを延長する、あるいは別のビザに切り替えるというケースではない場合、必ずイギリス国内からではなくイギリス国外から申請しなければならないということだ。Tier 5 – Youth Mobility Schemeも同様、イギリス国外から申請しなければならない。
・Tier 2 – General
まず、スポンサーライセンスを持っている企業に就職を決める。それから、企業側に「Certificate of sponsorship」を取得してもらう。最後に、オンライン上でビザを申請する。
・Tier 4 – Student Visa
オンライン上で申請する。別途就労ビザを申請する必要はない。
・Tier 5 – Youth Mobility Scheme
抽選の時期、参加方法をイギリス政府の公式サイトから確認する。日本語で説明されているので簡単。2019年は1月と7月、2回抽選が行われる予定(詳細はこちら)。
規定通りの内容をメールで送り、抽選に参加。当選したらオンライン上で決済と申請を進める。なお、2019年1回目のエントリー期間は1月14日(月)12時(正午)から2019年1月16日(水)12時(正午)までだった。このように短期間なので、挑戦したい方は気をつけよう。
イギリスでの暮らし
イギリスの家賃は非常に高い。もしロンドンのフラット(アパートのこと)に1人で住もうと思ったら、最低でも月に2,000ポンド(約29万円)もかかってしまう。そのため、ロンドンではフラットシェアと呼ばれるルームシェアが一般的だ。家賃だけでなく、光熱費や生活費、食費などもシェアできるので経済的である。
もしくは、郊外に住むことを考えよう。イギリスは家賃、交通費だけでなく物価も高く、ほとんどの商品にVATと呼ばれる付加価値税が20%かかる。月々の生活費は2,800ポンド(約40万円)はかかると言われているが、その分、無料で楽しめる美術館や博物館、イベントなども多くある。また、激安スーパーも数多くあり、毎日自炊すれば食費はかなり節約できるだろう。工夫次第で豊かな生活が送れるはずだ。
ちなみに、イギリスで就職するには銀行口座とNIナンバー(National Insurance)と呼ばれる国民番号が必ず必要になる。取得には最低でも1ヶ月はかかるので、早めに準備をしておこう。
イギリスで働く日本人の体験談
地道な就職活動と英語力が必須
(現地在住ライター 竹内奈緒美)私は現在、フリーランスのWEBデザイナー・ディベロッパーとして働いているが、フリーランスになる前に、イギリス現地のWEB制作会社に5年近く勤務した経験がある。英語も堪能ではなく、唯一の武器が覚えたてのスキルだけだった素人同然の私が、どのようにして海外現地企業に就職したのかをまとめてみる。
まず、WEBサイトをひとつ制作し、自分のポートフォリオサイトを別途作成した。その後、複数の求人サイトにCV(職務経歴書)を登録すると、メールや電話でエージェントから連絡が来るようになった。勤務地や年収、職務内容がこちらの希望と合致せず、残念な結果になる事のほうが多かったが、諦めずに就職活動を地道に続けた。自分のスキルを証明できるよう準備を整え、ある企業の面接を受けると幸いな事に合格し、数日後から働き始める運びとなった。その後5年近くその会社で技術・精神両面で貴重な経験を積ませて頂いた。
イギリスで就労するために必要な能力は、何をおいてもまずは英語力だ。社内での意思疎通ができないと仕事に大きな影響が出てしまうため、スキルは二の次といってもいいほどだ。面接の際、ビジネス英会話ができれば上等だが、英語の丁寧な言い回しで会話ができるのであれば、英語力に関してはほぼ問題ないだろう。また、私の経験からすると、圧迫面接は皆無で、どの面接官も常識的な質問をしてきた。私の職種の場合、面接時にスキルテストを受けることもあるだろうが、その場合、事前にテスト実施の旨を教えてくれる。
就職後の待遇については、一般的に女性の年収が男性の年収より20%程度低いというデータがイギリスにはある。自分のスキルと年収が釣り合っているか、女性はよくよく検討したほうが良いだろう。
日系以外の仕事を見つけるにはCV(職務経歴書)がカギ
(現地在住ライター バックリー佳菜子)
海外の中でも、筆者が住むイギリスでは日系企業も多いため、日系で働くかそれ以外で働くかで就職活動も大きく変わってくる。日系の仕事を探すのであれば、現地在住の日本人コミュニティー向けの無料雑誌が発行されており、その中で求人広告が掲載されている。また日本人コミュニティ向けの掲示板やウェブサイトも複数あるため、在英歴が浅かったり、日系の仕事を探したい人はそこで求人を探す人が多いようだ。
筆者はここ10年ほどずっと英系企業で働いてきているため、日系以外の仕事を見つける際の話をしたいと思う。現地の求人に応募する際、きちんとCV(職務経歴書)を作ることが大切である。欧米諸国では日本のように決まった履歴書のフォーマットがあるわけではないので、フォーマットと内容を自分でゼロから作成しなくてはならない。欧米でCVとは日本でいう履歴書と職務経歴書と自己PRが合わさったような形式となる。筆者は自分で作成したCVをプロに校正・修正してもらった。第三者目線でもわかりやすいCVにすることで、まず書類選考に通ることが必要だからだ。
面接では第一面接で一般的な志望動機等の面接、第二次面接で課題が与えられてプレゼンをするケースが多い。また最近ではLinkedIn等経由で求人紹介が来る場合が増えてきた。常にアップデートをし、リクルーターの目に留まるようにしておくといいだろう。
イギリスで働くことに興味があるのであれば、まずどのような案件があるかを確認しよう
ここまでイギリスでの仕事の見つけ方について説明してきたが、希望通りにイギリスで働くことができるかどうかは、結局のところ求人案件次第である。イギリスで働くことに少しでも興味があるのなら、ひとまず海外の求人案件に強いサイトに登録して、自分の経歴や志向に合わせた案件を紹介してもらおう。エリアや職種、給与水準がある程度分かるようになれば、いっそう具体的にイギリスでの働き方や実際の生活がイメージできるはずだ。
当然ながら、日本での求人に比べて海外求人案件は少ない。くわえて、求人サイト内で非公開となっているものも多い。なのでまずは複数サイトに登録し、それぞれのサイトの非公開求人を見てみることから始めよう。
海外の求人案件に強く、日本に拠点がある主な求人サイト・エージェントは以下の通り。
①JAC Recruitment
<サイトの特徴>
1975年イギリスで創業、コンサルタントの人数は約550名、業界最大規模の転職エージェント。世界10ヵ国で日系企業、外資系企業、各国のローカル企業などに対し人材紹介事業を幅広く展開している。スタッフレベルのポジション以上、年収500万円以上のスペシャリスト、マネジメント層、グローバル人材に向けた求人に特化していることが特徴。日系企業や日本法人のある外資系企業の、海外勤務案件や海外駐在案件が得意。
国名から求人情報を検索することもできる。各国のコンサルタントの知識とスキルが高く、利用者からの評判は極めて高い。
<サイトの利用方法>
まずは会員登録をして求人情報を探す。国ごとに求人情報を検索できるので、海外で勤務したい場合は国名から選ぼう。外資系企業やグローバルな人材を求めている企業の求人情報も豊富なので、語学力を活かしたい人や駐在員を目指している人は、コンサルタントにそのように伝えること。
自分の希望とマッチした求人情報が見つかったら、履歴書添削や面接対策、スケジュール調整などのサポートを受けながら採用選考を受けることになる。
②ロバート・ウォルターズ
<サイトの特徴>
1985年にイギリスで設立された人材紹介会社。2000年には東京オフィス、2007年には大阪オフィスが設立され、現在では世界30ヶ国の主要都市にオフィスを構えている。キャリアアドバイザーは全員バイリンガル、中には外国人もいるので、転職活動をしながら語学力を磨くこともできる。
外資系企業、日系のグローバル企業の求人情報に強く、またスタッフレベル以上、年収500万円以上の高収入所得者に向けた求人情報が多いので、優れた職歴やスキルを持つ人材には特におすすめだ。履歴書の添削や面接の受け方の指導など、アフターフォローも充実している。登録した情報を元に、スカウトメールが届くこともある。
<サイトの利用方法>
外資系企業や日系のグローバル企業の求人情報が豊富なので、語学力やスキルを活かしてそういった企業に務めたい場合は、希望する職種や給与を元に求人情報を検索しよう。海外での就職を目指す場合は最初に会員登録をして、海外で働きたいことや希望の勤務地などをキャリアアドバイザーに伝えよう。勤務地が海外の求人情報は少ないので、各国の求人情報について熟知しているキャリアアドバイザーにまずは相談しよう。