中国ではインターネットのアクセス規制・検閲に関する条例が60以上存在すると言われ、インターネットプロバイダや政府が監視の目を光らせている。実際にアクセスできないサイトとして、Googleを初め、FacebookやTwitterといったSNS、Youtubeやニコニコ動画等の動画共有サイトまで、日本では当たり前に使えるサービスが利用できない。また、中国版TwitterであるWeiboに投稿された不適切な内容は平均1時間程度で削除される等、検閲も極めて厳しい。このような中国政府によるインターネットアクセス規制・検閲について、中国国民はどのように受け止めているのだろうか。現地の反応を、中国在住のHowTravelライターがリポートする。

※この記事の内容は現地在住者自身の経験と知見に基づくものであり、HowTravelの主張を代弁するものではありません

スポンサーリンク

アクセス規制は「暗黙の了解」

(現地在住ライター 高橋亮

現在中国ではスマートフォンの普及が日本以上に進んでいる。道では歩きスマホを常に見かけ、お店に入ると店員もスマホをいじっているのが現在の中国だ。このようなインターネットの普及とともに、以前に比べるとかなり多くの中国人がインターネットが規制されていることを認識しつつある。とくにインターネットに書き込み等を積極的に行っている若者の間では「金盾」といわれる中国の検閲システムの存在は暗黙の了解で、検閲対象になりそうなコメントには注意を払っている印象を受ける。しかしこれらの検閲を恐れているというよりかは、仕方ないものとして受け入れているというのも事実であろう。

中国のインターネットにおいて検閲や削除のことを「和諧」という隠喩で表現をするのだが(和諧とは調和のこと)、中国サイトの掲示板等できわどいコメントがあると「和諧されるぞ!」と書き込みをしたり、削除されたコメントには「和諧されたな」等のコメントを見かけることがある。このようなコメントからは、むしろ検閲されている事実を楽しんでいるような印象さえ受けることがあるほどだ。

若者のなかにはVPNといわれる仮想ネットワークサービスを利用して、海外のサイトやSNSを楽しんでいる人も少なくない。以前では淘宝網(中国最大のショッピングサイト)のなかでもVPNサービスを購入することができるようになっていたが、今ではできなくなっているところをみるとVPNサービスの販売自体も検閲対象になってしまったようだ。それでも中国国民は検閲の目を掻い潜ってVPNサービスを利用し、インターネットを楽しんでいる。

中国では古くから「上有政策、下有対策」という言葉がある。これは上に政策があっても下には対策があるという意味であるが、インターネット事情についてもまさにこの言葉が当てはまるといえるだろう。特に若い世代の中国人は、こうしたインターネット規制対策により、これまで以上に自国のことを客観的に理解するようになってきており、中国も大きく変わりつつあるといえるのかもしれない。