日本人に比べて多くの外国人は宗教に熱心であり、宗教を持たない日本人は奇異な目で見られるということが多々ある。海外では宗教の話はしないことということが暗黙の了解として認知されている。

その一方、外国人の中には日本人の宗教に興味深々という人もいて、話が避けられない場合もある。実際のところ、外国人にとっての宗教とはどのようなものなのか。また、そのような会話になった場合、日本人は何に気を付ければいいのか。海外現地在住ライターがリポートする。

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【アメリカ】デリケートだがタブーではない宗教の話題

(現地在住ライター 長谷川サツキ

アメリカ人はほとんどの人が自分の宗教をはっきりと持っている。しかし国際化が進んだ現代では無神論者や特定の宗教を持たない人も少しずつだが増えてきており、そういった人々がいるという認識も広まってきた。そのため地域や出自にもよるのだろうが、宗教が違うという理由だけでいきなり一発触発になることはまずない。

アメリカで宗教を話題にするには女性に年齢を聞くくらい慎重になった方が良いが、決してタブーという訳ではない。親しい友人なら「宗教なんだっけ?」くらいの軽さで聞ける場合もある。様々な民族が混ざり合う国だからこそ、相手の宗教を知っておくことでお互いの宗教を尊重して付き合えるという考え方が根付いているのだ。季節の挨拶状であるクリスマスカードも相手がキリスト教徒でないならクリスマスという文言の入っていないカードを選び、異なる宗教の教会での結婚式も問題なく出席して祝福する。日本の宗教観についてアメリカ人と盛り上がることもしばしばだ。

それでも私は、自分からは宗教の話は振らないようにしている。正直日本人である自分には、宗教の話にどこまで踏み込んでいいか実感として判断がつかないからだ。相手から宗教の話をしてきた時のみ話に乗ることにしている。

【フランス】互いを知るために宗教の話をするが、否定をしない

(現地在住ライター 竹内真里

パリに来て以来、イスラム教徒、キリスト教徒、仏教徒、ヒンズー教徒、ユダヤ教徒など、さまざまな宗教を信仰している人々に出会った。筆者の場合、友人間では宗教の話をたまにする。特に食べ物の話題になると宗教も関わってくることが多いので、知識に乏しい自分はいろいろと質問してしまうのだが、丁寧に答えてくれている。

例えばレバノン人の友人2人のうち、1人はキリスト教徒でもう1人はイスラム教徒だ。彼女らはレバノンには複数の宗教やセクトが存在することや、宗派の違いや特徴などを説明してくれた。また、フランスではブルカなどのイスラム教徒の女性の服装について問題視されていることもあり、それについてどう思うか話をすることもたびたびある。

また、クリスマスも近づくこの時期「日本ではクリスマスを祝うの?日本人は何の宗教を信じているの?」と聞かれることも多い。無神論者が多いことや神道について話すと、興味深そうにふむふむと聴いている。「ギリシャ神話に近いのかしら」と言った人もいた。

このようにこれまでの個人的な交流の範囲、経験上では、特にタブーと捉えることもなく宗教に関する会話をしている。しかし、質問とその回答といった程度で、議論などには発展しない。各自が崇拝する対象や宗教をけなしたり、否定する発言は決してしないように気をつけている。

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【イギリス】安易な同意や反論はせず理解したことを伝えるのが大切

(現地在住ライター 竹内奈緒美

以前、食事前に「いただきます」と無意識に手を合わせた時、その様子を初めて見たイギリス人に「それはお祈り?」と聞かれたことがあった。特に隠すことでもないため、その動作の意図を「材料となった命や関わった人たちへの感謝だ」と説明したところ「今までそんなこと考えもしなかったけど、面白い発想ね」と言われた。

彼女の答え方には、宗教に限らずデリケートな話題に対応するためのコツが隠されているように思う。その人の根幹や生き方に関係しているであろう話題になった場合、安易に同意したり、ましてや反論するなど禁忌だ。例え承服しかねる内容であっても、最後まで誠実に話を聞き、相手の気持ちを否定せず、自分が理解したことを伝えられれば十分だろう。