ハロウィンの日には渋谷などの若者の街を中心に、仮装をした人が朝まで騒ぐというのが、近年恒例となっている。そもそもハロウィンというのはヨーロッパ発祥の、秋の収穫を祝いながら悪霊を追い出す民族的な祭りである。一説によると、中世の農民が祭りを開催するための食糧を集めて回っていたことを真似て、子供たちが仮装をして家々を回ってお菓子をねだるという現代の慣習がつくられたといわれている。
しかし、日本におけるハロウィンには、収穫祭を祝うというような文化的背景は反映されていない。また、多くの場合、ハロウィンを楽しんでいるのは10代後半から30代の大人であり、子供ではない。また、必ずしもお菓子を貰うことが目的とはなっておらず、一種の仮装パーティーの日と化している。時代の変遷を受けてハロウィンは形を変えてきたとはいえ、「収穫を祝う祭りを歴史的背景とし、仮装をした子供たちが家々を回ってお菓子をねだるイベント」から、「仮装をした大人たちが渋谷で朝まで飲み騒ぐイベント」への変化は大きい。
このようなハロウィンの状況は日本特有なのだろうか。ハロウィン発祥の地であるヨーロッパイギリス、元々ハロウィン文化はなかったがアメリカの影響を受けるブラジル、日本と同じくアジアでハロウィン文化がなかった台湾の現地在住ライターがリポートする。
目次
【イギリス】クラブでハロウィンは日本だけじゃない!
(現地在住ライター バックリー佳菜子)イギリスでは、欧米ハロウィンのイメージ通り、子供たちが仮装して学校や家庭でパーティーをするファミリー向けのイベントとして盛り上がっている。各スーパーでは仮装コスチュームやフェイスペイント、ランタンを作るためのかぼちゃや近所の子供たちに配る用の小分けになったお菓子の特設コーナーが設けられている。
ただロンドンのような単身者が多い都市部ではホームパーティーというよりは、クラブなどのハロウィンイベントを楽しむ若者が多いようだ。毎年ハロウィンの仮装をした若者たちが夜遊びに出かけるためロンドンの地下鉄Tubeがゾンビやお化けで溢れているのも風物詩となりつつある。
ただ日本のハロウィンイベントのように街中で仮装して騒ぐというのはイギリスでもあまりなく、特徴的といえるかもしれない。
【ブラジル】日本とは違って子供のお祭り
(現地在住ライター 増成かおり)
ブラジルではハロウィンの日は魔女の日と呼ばれている。11月2日の万霊節もあり、この時期は墓参するのが伝統だ。
しかしこの15年ほどだろうか、ショッピングセンターではカボチャなどハロウィンの飾り付けを目にする。子供が仮装パーティをしたり、家々を廻ってお菓子をねだったりというアメリカの習慣が入ってきた。
治安が悪いためお菓子を貰いに歩くのはアパートの建物内に限られ、一般の住宅を訪問することはない。私のアパートにも子供が来ていたが現在は禁止されている。あまりに頻繁に子供が来るので住民から苦情が出たのだ。
それでも以前、私の暮らすアパートで住民同士のハロウィンパーティが催されたことがある。なんのことはない、いつものブラジルのパーティと同じ、肉を焼いて楽しむシュラスコパーティだった。パーティの理由は何でも構わないのだろう。ハロウィンは、大人ではなく一部の子供のものでしかなく、この国に根付いていないと言える。
【台湾】基本的には子供のお祭りだが、クラブでハロウィンもある
(現地在住ライター 山田純)台湾は幼稚園から英語教育が盛んなため、ハロウィンも欧米と同じように子ども中心で執り行われる。ハロウィンは中国語で「萬聖節」と言うが、萬聖節が近づくと仮装した幼稚園児たちが先生に連れられて近所のスーパーやコンビニ、デパートなどに行き「トリックオアトリート!」と叫びながらお菓子をもらっている光景をよく目にする。
大人のハロウィンに関して言えば、日本のように盛んではなく、バーやナイトクラブ主催のハロウィンパーティーがあるぐらいだ。しかし、幼稚園にも賞品が発生するような子どもの仮装コンテストがあり、親が血眼で子どもの衣装選びに躍起になる姿は、日本のハロウィンと近い感覚を覚えなくもない。
また台湾では常に日本旅行人気が高いため、ハロウィン時期のディズニーランドやUSJのツアーを企画する旅行会社も多く、アニメ好き台湾人のためにハロウィン中、街頭でコスプレが見られる場所を紹介したサイトも多くある。台湾人にとってハロウィンの仮装は自ら「する」もの、というよりも「見る」もの「撮る」もの、なのかもしれない。