百姓の子として生まれ、天下人まで上り詰めた豊富秀吉のサクセスストーリーはあまりにも有名だ。主君である織田信長の死後、織田家を乗っ取ったというような見方はありつつも、彼の劇的な出世話の印象が強く、日本での豊臣秀吉の評価は概ね悪くはないのではないだろうか。一方、韓国での評価はその限りではない。豊臣秀吉といえば朝鮮出兵(文禄・慶長の役)を行っており、韓国からすれば侵略者として受け止められている。韓国における豊富秀吉の評価を韓国現地在住ライターがリポートする。
韓国での豊臣秀吉は、常に悪役
(現地在住ライター キム・ヒョンジ)韓国の歴史の教科書に登場する二大悪役が居る。それは、韓国統監府の初代統監である伊藤博文と、朝鮮出兵を行った豊臣秀吉だ。共通するのは、朝鮮半島を侵略した当事者であると教科書に書かれているのだ。伊藤博文に関しては、暗殺を行った安重根(アン・ジュングン)を英雄としている以上、伊藤博文は極悪人でなければならない。そして、豊臣秀吉は朝鮮半島において、日本が最初に侵略行為を行った張本人として教科書に書かれているのだ。
豊臣秀吉が行った朝鮮出兵は、釜山へ上陸し瞬く間に現在のソウルまで進軍し、その後、現在の平城まで進軍したが、全国民が一丸となって戦い、7年間に及ぶ戦争は朝鮮の勝利に終わり、豊臣秀吉の侵略は失敗に終わった。しかし、この戦争で最大の被害を受けたのは朝鮮であった。また、その当時の先進文化である陶磁器や活字印刷の技術が日本に持ち去らわれ、その後の日本の文化発展につながったとされているのだ。
そして、この戦争での英雄が、李舜臣(イ・スンシン)将軍だ。この題材を2014年に映画化したのが、「ミョンラン」日本題「バトル・オーシャン 海上決戦」だ。この映画は、韓国映画史上稀にみるヒットなった。この李舜臣将軍は、秀吉軍に勝利し朝鮮を勝利に導いたとされる韓国一の英雄だ。それ故、ソウルの光化門広場をはじめ釜山、麗水など韓国のいたるところに銅像が建造されている。また、昔の500ウォン札にも肖像が描かれていたのだ。この朝鮮出兵による戦争は、反日のプロバガンダの一つとされ英雄李舜臣を生み出した。そして、この他にも朝鮮出兵の時代を題材にした映画やドラマが作られてきた。それ故、韓国人が知る豊臣秀吉は、何も罪の無い朝鮮国民を殺害し、侵略行為を行った悪役でしかないのだ。