日本では、第二次世界大戦での日本の行いについての是非が長らく議論されてきた。戦争開始は止むを得なかったというような話から、戦争中の慰安婦問題や南京事件、そして戦後の靖国参拝等、第二次世界大戦に関係する議論は尽きない。同じく敗戦国であるドイツでは、第二次世界大戦でのドイツの行いはどのように捉えられているのか。ドイツ在住ライターがリポートする。
※この記事の内容は現地在住者自身の経験と知見に基づくものであり、HowTravelの主張を代弁するものではありません
ドイツ人が「愛国心」を嫌悪する理由の一つに
(現地在住ライター Kanako K)初めてナチス時代に関連した話題に触れた時、「愛国心を持っているドイツ人は殆どいないだろう。」と語ったのは20代後半のドイツ人青年。おそらく、この話題に関して爽やかに語れるドイツ人は少ないだろう。
学校ごとに異なるが一般的なドイツ人は日本でいう中学生頃から高校を卒業するまでナチス時代に関連した歴史の授業が続く。それはヒットラーの生い立ちや、当時のオリジナルの記事を読んだりと細かく学んでいく。社会では毎年のようにドキュメンタリーやフィルムが流されるし、殆どの国民はナチス時代について均等な知識を備えている。
決まって語られるのは、ナチス時代に起こった事は忘れてはいけない出来事であり、ドイツ人の非道徳的な行いは今後繰り返さないためにしっかりと学び後世に受け継ぐことが重要だという。確かに、普段は陽気に過ごしていても、この話題に触れると殆どのドイツ人はちゃんと説明してくれるし、どう感じているか考えをしっかり持っている印象がある。
ドイツ人が「愛国心」を嫌悪するのはヒットラーの思想と関連すると考えることが理由の一つに挙げられる。しかし、数年前までは家や車などに国旗を掲げるというアクションは「愛国心」の象徴として忌み嫌われていたようだが、近年、サッカーやイベントの際には国旗を掲げる人も増えてきている。これはどういうことか。
数年前から移民問題や避難民問題で政治的にも混迷するドイツ。そんな中、2013年に結成された「ドイツのための選択肢(AfD)」というドイツの右派政党が誕生した。思想は最も国民保守主義であり、避難民や定住外国人等に対して否定的な政党といえる。「緊急時には銃を使ってでも(難民の)入国を阻止すべきだ」こう発言したのは当政党の党首だった。しかし、こんな過激な発言でありながら近年のドイツでは波紋を呼ぶに留まっている。
30代前半のドイツ人女性によれば、「そんな発言は以前だったら相当な非難を浴びていたはずなのに、それを容認しているドイツ人が増えてきている。外国人を排除する思想はヒットラーの思想に近いものがあり、不安に感じている」と語っていた。ナチス時代という歴史を経たドイツ、世界情勢の変化と共に今後どのように旋回していくのか、見守る必要があるだろう。