最近では歌手のGACKTさんがパリのホテルで人種差別を受けたエピソードが話題となったが、フランスを旅行する際や、留学・転勤等でフランスに住む際、人種差別があるのかというのは気になる問題だ。GACKTさんはフランス語が喋れるとのことだが、一般的に旅行者から聞く人種差別エピソードは、単に文化的な違いでそっけないだけの場合や、言葉がうまく伝わらなかっただけの勘違いということもあり、全てを鵜呑みにはできないこともある。そこで、フランスに長年住む現地在住ライターが、フランスの人種差別事情をリポートする。

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人種差別はある フランス語が話せるかどうかもカギ

(現地在住ライター 竹内真里

フランスは出身国が異なる移民が多く暮らしている。大きな街ほど有色人種が多く、地方の村などではあまり見かけない。見た目が白人という理由で「フランス人」と思っていても、自国より良い環境や職を求めて親の代から移住し、フランス国籍を得たポルトガル人やスペイン人、東欧人なども多く居る。

個人的な考えで言うと、フランスで人種差別はある。肌の色で言うならば一番風当たりが強いのがアラブ系と黒人系で、黄色人種のアジア系は特に問題を起こさずおとなしいと位置付けられているように思うが、おとなしいがゆえに適当にあしらわれる率が高い。さらにフランス語が理解できるか、話せるかによって差別の度合いが違ってくる。

歌手のGACKTさんがレストランで差別されたという話があったが、同じような経験はある。日本から遊びに来た友人と食事に行った時のこと。そこそこ客が入っているテラスに空いているテーブルがあり、ここに座りたいと告げても奥へ行けと言うので「でも予約席ではないですよね。天気も良いしこの席で食事したいんです」と言うと、パリジャンがよくやるイライラやめんどくせえなあを表す「ぷーっ」と大きなため息をつかれたものの、希望の席に座ることができた。この時はなぜ奥に案内しようとするのか理由を尋ねなかったのだが、単に彼が料理を運びやすいからかもしれないし、まして尋ねたところでご丁寧に理由を説明してくれるとも限らない。

他には人種差別とはちょっとずれるが、びっくりすることを言われることもたまにある。「あなたの国にテレビはあるの?」、「犬食べるんでしょ」、「帰化の手続きは大変そうね」、「フランスの生活は恵まれているでしょう」など。いずれも発言者は山ごもりしていた人でもない。単純に日本に関する知識がないのか、ちょっと意地悪なのだろうか。

フランス滞在中に不愉快な思いをし、それが人種差別に基づいたものであるか判断できかねることもあるだろう。ただ、日本では一般的な人の知識や能力はわりと平均的だが、こちらは非常に個人差があることを頭の片隅に入れておくと、受ける衝撃も多少和らぐかもしれない。

差別があることを認識した上で海外旅行を

(HowTravel編集部)

程度の差はあるとはいえ、人種差別は日本を含めてどこの国でもあるため、いちいち目くじらを立てていてはせっかくの海外旅行が楽しめなくなってしまう。人種差別を受けるというのは誰にとってもショックな出来事ではあるが、事前にどのような差別を受ける可能性があるのかを認識しておけば、旅行中に嫌な思いをすることは少なくなるはずだ。そもそも差別は文化的な違いから生じる側面が強く、それすらも文化体験の一つと思えるくらいの心の余裕を持っておければ海外旅行が一層楽しくなるだろう。