ドイツ観光局 日本支局長
西山晃 氏
1994年からドイツ観光局日本支局に勤務し、2008年よりマーケティングディレクターを担当。2017年5月より現職。
難民問題が旅行客に及ぼす影響に関して教えてください。
難民に関する事件がゼロということではありませんが、一部の出来事を日本のメディアが繰り返し報道することで、「ドイツは難民が多くて危険」というイメージが過剰についてしまっていると考えています。
難民が旅行者に危害を加えるというような事件は発生していませんので、気にしすぎる必要はないと思います。
テロの危険性や対策はいかがでしょうか。
テロに対する注意は必要ですが、日本の報道から抱くイメージのような危険な状況ではありません。
パリのテロ以降、ヨーロッパ各国ではテロ対策を進めていて、ドイツでも十分に対策されています。例えば、クリスマスマーケットなどの人が集まるイベントでは、テロを未然に防ぐために警備が充実しています。鉄道の駅でも、目立つように警備員が配置されています。入国審査も従来より厳しくなっています。
これら対策の効果もあって、2017年は大きな事件は起こっていません。外国人旅行者にとっても安全な旅行先だと言えます。実際、海外からのドイツへの旅行者数は近年も増加していますし、国家に対する印象を指標化した「ネーション・ブランド・インデックス」においても、ドイツは2017年1位となりました。
※「ネーション・ブランド・インデックス」は米系調査会社が実施している調査で、観光や文化、国民性などを指標化している。日本は2017年4位
■Anholt-GfK ネーション・ブランド・インデックス
国名 |
2017年ランキング |
2016年ランキング |
ドイツ
|
1位 |
2位 |
フランス
|
2位 |
5位 |
イギリス
|
3位 |
3位 |
カナダ
|
4位 |
4位 |
日本
|
4位 |
7位 |
アメリカ
|
6位 |
1位 |
イタリア
|
7位 |
6位 |
スイス
|
8位 |
8位 |
オーストリア
|
9位 |
9位 |
スウェーデン
|
10位 |
10位 |
(データ参照元:Anholt-GfK Nation Brands Index公式HP(英語のみ))
ドイツ旅行の楽しみ方を教えてください。
ソーシャルメディア上でも映えるような美しい景観を撮影する楽しみ方などがあります。ドイツには絶景スポットがたくさんあって、私たちもTwitterを始めるなど、みなさんにドイツの絶景をたくさん知ってもえるように努力しています。ドイツのことをあまり知らない方や、ドイツの歴史や伝統に興味を持っていない方でも、自然の景観の美しさや、ドイツならではのお城の風景などで興味を持ってもらえる可能性があると思っています。
興味を持って頂いた方は、インターネットなどで更に歴史などを調べてみて頂けたらと思っていますが、ドイツ観光局として、まずはドイツに興味関心を持ってもらえるように工夫していきたいです。
気軽な気持ちでドイツを訪れて欲しいということでしょうか。
ドイツ観光の魅力は歴史、食、車など、非常に多岐に渡りますので、無限の楽しみ方があります。しかし、興味のない人に歴史などを話してもゲッソリしてしまうだけですし、自分の興味のあるものでドイツに興味を持ってもらって、現地で様々な他の魅力を発見してほしいです。
例えば、旅行者の中には、普段はクラシックやオペラをそんなには聞かないけど、せっかくドイツに来たし、有名なオーケストラを手軽に聞けるのであれば聞いてみよう、といったきっかけで体験する人もいます。で、体験することで、クラシックが好きになるかもしれませんよね。そういう"スイッチ"が入ることによって、ドイツの更なる魅力に気付いてくれればと思います。
現地に行くと意図していなかった魅力に気づくということでしょうか。
そうですね。行ってみたら、街がきれいだったとか、食事は不味い印象だったけど実際は美味しかったとか、意外に安いとか。
ドイツは経済的に豊かなので物価が高いと思われがちなんですが、実は観光で行くと周辺各国よりも圧倒的にお得なんですよね。Affordable Destination(手頃な価格の旅行先)なんです。例えばホテルの金額は圧倒的に安い。パリなどの所謂トップ観光都市をドイツの主要都市を比べると、極端な場合だと倍くらいになります。しかも、ドイツは性質上、几帳面だから清潔なんですよ。だから安い宿に泊まっても、質素かもしれないけれど、綺麗なんです。別の国ではそうではないですよね。
日本と感覚が近いように思います。
たぶん、ドイツの方が、宿泊施設のクリーンさや清潔さは圧倒的に上回っています。日本のビジネスホテルなどではタバコ臭い部屋などもあると思いますが、ドイツはそういったことはあまりないです。
日本人旅行者にとっては嬉しいですね。
そうですね。日本からの直行便も多く、特に日本の首都圏の方にとってはヨーロッパの中で一番行きやすい国になっていますし、行った先も、想像されているよりもずっと安全です。たくさんの旅行者が、自由にドイツ中を旅行していますし、安心して来て頂いて良いと思いますよ。
また、決められたことをきっちりする国なので、トラブルも少ない。すり置き引きなどにはやっぱり注意は必要ですけれど、身の危険を感じるようなことや、予定してたことが全然履行されないといったリスクはありません。アドベンチャーを期待している方には不向きかもしれないけれど、安心して旅行そのものを存分に楽しみたい場合、ドイツという国は日本の方にとってベストデスティネーションの一つだと思います。
HowTravel読者へのメッセージ
ドイツは春夏秋冬がありますし、ドイツ各地が地方色豊かなので、季節や場所によって楽しみ方が違います。南のミュンヘンや春のドイツを見たからといってドイツを全部を見たとはならないんです。この点は日本と一緒ですよね。どこかの部分で、ちょっとでもドイツを面白いと思って頂けたら、是非ドイツの他の地域だったり、別の季節にでも再訪して頂きたいと思います。
そういう意味でいうと、なんとなくどこかに行ってみたいけれど、どこに行くべきかまだ決められていないという方にもドイツはお勧めです。春夏秋冬で移り変わるイベントや、風景、食の魅力などがあり、様々な提案ができる懐の深い国です。HowTravelのコンテンツをご覧になって頂いたり、ドイツ観光局のサイトを見て頂くことで、色々なことが提案できるかと思います。
文化的に非常に層が厚いドイツには、みなさん個々人が日々の日常の中で感じている好奇心を満たしてくれるようなものがきっとありますので、是非いらしてほしいなと思います。