アンコール・ワット(アンコール遺跡群)を訪れるツアーの特徴
アンコール・ワットは、カンボジアの首都プノンペンから北西へ約230キロメートル、車で約5時間半のシェリムアップに位置している。ツアーの多くは、
シェリムアップの市街地を出発地として催行されている。
アンコール遺跡の入場チケットは現地では販売しておらず、市街地とアンコール・ワットの間にあるチケットセンターでアンコール遺跡群に入場するためのパスを事前に入手しておく必要があるが、ツアーに申し込むことで手配の手間を省くことができる。
また、どのツアーも
公共交通機関が全く存在しないシェムリアップ市内を効率よく移動できるように工夫が凝らされている。カンボジアの暑さに慣れていない観光客向けに組まれているため、快適に過ごせるのも特徴だ。
短い行程でも主要なスポットを効率よく巡ることができるツアーや、遺跡でじっくりと歴史に触れるツアー、朝日からディナーショーまで1日たっぷり観光するツアーなど様々なツアーが催行されている。旅行日程や訪れたい遺跡に合わせて選ぶと良いだろう。
歴史ある建造物についてきちんと解説してくれる、ガイド付きのツアーで訪れるのがおすすめだ。
催行されているツアーの内容は多種多様で、ウルル自体を楽しむだけではなく、ホテルでの滞在やラクダに乗っての観光など多種多様なツアーが催行されている。自分の好みに合ったツアーを選ぶと良いだろう。
アンコールワット(アンコール遺跡群)観光の概要
アンコール・ワットは、12世紀前半、スーリヤヴァルマン2世によってヒンドゥー教寺院として建立され、16世紀後半に仏教寺院に改修された。大伽藍と美しい彫刻が特徴のクメール式建築の傑作で、1993年に制定されたカンボジア国旗にも描かれているカンボジアを象徴する寺院遺跡だ。
周囲には、400万ヘクタールに渡って
クメール王朝(アンコール王朝)時代の遺跡が点在しており、「アンコール遺跡群」としてユネスコの世界文化遺産に登録されている。中には、アンコール・ワットよりも数世紀前に建てられた古い寺院遺跡も含まれている。
アンコール・ワットのツアーで訪れる代表的なスポットの解説はこちら>>
【272ツアーから厳選】アンコールワットのおすすめツアー一覧
①見所を効率よく回って盛りだくさんの1日を過ごせる、人気ナンバーワンツアー
基本情報
料金 : | USD57.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 15.5-17時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワット周辺、アンコールトム(南大門、バイヨン、象のテラスなど)、プレループ、タプロームなど |
総合評価
アンコール遺跡周辺を1日で堪能でき、人気・満足度ともに非常に高いイチオシのツアー。
コスパ評価
同様の価格帯のツアーと比較して内容の充実度が随一。
口コミ評価
「充実の1日になった」「是非参加するべき」など高評価の口コミが多数。
概要説明
このプランでは、丸一日かけてアンコールワット周辺の主要な遺跡を巡ることができる。ツアーは朝日が昇るアンコールワットの観賞からスタート。オプションで気球に乗り空からアンコール遺跡群を眺めるプランもあるので、希望の方はぜひこちらもご参加を。
昼間はアンコールトムの観光やショッピングやマッサージを満喫。ランチはカンボジアの家庭料理を楽しめる。その後昼間のアンコールワットを見学、夕方はプレループ遺跡で夕日の観賞を。夜はカンボジアの伝統舞踊アプサラダンスのディナーショーを楽しんで。
広いアンコールワット遺跡群の見どころを効率良く回れるツアー。日本語ガイドが付くのでその点も安心。
短い時間で主要スポットを見てまわり、伝統舞踊やご当地料理にまで触れられる、欲張りさんも大満足のイチオシツアー。
②おひとりさま大歓迎!3大遺跡の見どころを余さず回るツアー
基本情報
料金 : | USD48.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 10-13時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワット周辺、アンコールトム(南大門、バイヨン、象のテラスなど)、プレループ、タプロームなど |
総合評価
アンコール遺跡周辺を1日で堪能でき、人気・満足度ともに非常に高いイチオシのツアー。
コスパ評価
昼食付きで、一人で参加しても料金が変わらなお得なプラン。
口コミ評価
「また参加したい」「一人参加でも安心して楽しめた」など高評価の口コミが多数。
概要説明
このプランは
昼間のアンコールトム、アンコールワット、夕日のプレループを楽しむ内容。カンボジアの3大遺跡を一日でもれなく回れるとあって、スケジュールが決まった観光客にはありがたい内容だ。
プランでは現地のガイドの説明がわかりやすく、遺跡や文化の理解が深まったという参加者の声が多数寄せられている。またこのプランはさまざまなオプションがあるが、基本プランは1名限定のツアー。一人旅向けのプランのため、写真撮影や食事の場所で配慮があるのが特徴だ。この気遣いのお陰で、一人でも観光が楽しめたという声が多数寄せられている。
もちろん複数の参加もOK。気の合う仲間同士でも気ままな一人旅でも、カンボジアを満喫するならぜひこのプランで。
③貸切の専用車で自由に遺跡観光ができるコスパ抜群のツアー
基本情報
料金 : | USD25.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 4-8時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | 希望による |
総合評価
自分のペースで行きたいところを回りたい、という人に最適なツアー。
コスパ評価
付近で催行されている自動車チャーターツアーのなかで最安値。
口コミ評価
「快適に観光ができた」という口コミが多数。「翌日にも追加で申し込んだ」という人も。
概要説明
このツアーでは
貸切の専用車をチャーターし、自分のペースで観光ができるというプラン。ほかの参加者を気にせず回れるということで人気である。
ツアーはいくつかモデルコースがあり。アンコールワットをじっくり観光するコースやトレンサップ湖クルーズなどがあるのでHPで確認を。
またツアーはガイド付きとガイドなしがあるが、ここはやはりガイド付きがおすすめ。現地ガイドは日本語が堪能なため、遺跡の説明だけでなく人気のレストラン情報やアクティビティ情報を聞けることもメリットだ。車は1〜2名ならセダン、5名までならバンと車種も選べるが、年末年始などの繁忙期は混むため早めの予約が必須。マイペースで旅を楽しむならぜひこのプランで。
④自動車orトゥクトゥク貸切で3大遺跡とプノンバケンを巡るツアー
基本情報
料金 : | USD33.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 10.5時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワット周辺、アンコールトム(南大門、バイヨン、象のテラスなど)、プノンバケンなど |
総合評価
プライベート感たっぷりの貸切ツアー。マイペースに楽しみたい人におすすめ。
コスパ評価
内容の充実度、所要時間の長さ、諸要素を鑑みればコスパ抜群。
口コミ評価
「参加してよかった」「ドライバーの心遣いがよかった」という声が多数。
概要説明
このツアーは車かトゥクトゥクを貸し切って、カンボジアの3大遺跡を回るというもの。ほかの参加者に気を使わず自分のペースで回れるので、リラックスして観光を楽しみたい人や体力に自信のない年配の方に特に人気である。
3大遺跡はアンコールワット、アンコールトム、タプロームだがいずれもかなり歩くので、
車内の時間が休憩やお昼寝タイムになるのがありがたいポイントだ。車かトゥクトゥク(オート3輪車)か選べるようになっているが、エアコンのきいた車が断然おすすめである。
オプションでは象に乗って遺跡を回るプランも。象の高い背中に乗ると、普通に歩くだけでは見られない遺跡の細部が見られるとあって人気。ここでしかできない体験をあなたもぜひ。
⑤3大遺跡にバンテアイ・スレイ、早朝から夜まで充実内容が自慢のツアー
基本情報
料金 : | USD72.90- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 16-17時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワット周辺、アンコールトム(南大門、バイヨン、象のテラスなど)、バンテアイ・スレイ、アプサラダンスショーなど |
総合評価
朝から晩までみっちり観光の充実した内容! 時間を有効に使いたい人におすすめ。
コスパ評価
昼食・夕食込み、早朝から夜までぎっしりの充実内容でお得。
口コミ評価
充実の旅程に「参加してよかった」という声多数。「初めての方におすすめ」という口コミも。
概要説明
こちらのツアーは、アンコールワット・アンコールトム・タプロームに加え、ヒンズー教寺院の遺跡、バンテアイ・スレイを観光するという内容。
カンボジアを代表する遺跡を一日で回れるということで、時間の限られた観光客に人気のプランである。
朝はアンコールワットで朝日を観賞。その後、アンコールワット、アンコールトムを見学しガジュマルが神秘的なタプロームへ。ヒンズー教寺院のバンテアイ・スレイは繊細なレリーフが美しい遺跡。アンコール遺跡の中でも群を抜いて美しいといわれるこの寺院は必見である。
夜はアンコールワットで夕日を見て、ディナーはアプサラダンスのディナーショウを楽しんで終了。長丁場だが、盛りだくさんの1日を過ごしたい人におすすめ。
⑥早朝からお昼までの短期決戦型充実ツアー
基本情報
料金 : | USD35.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 7.5-8時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワット周辺、アンコールトム(南大門、バイヨンなど)、タプローム |
総合評価
初めてのカンボジア旅行におすすめ! 半日みっちり弾丸ツアー。
コスパ評価
3大遺跡を巡るツアー約40件の中で5本の指に入るお手頃価格。
口コミ評価
「効率よく回れた」「充実していた」という高評価多数。「日中の暑さを避けられてよかった」という声も。
概要説明
このツアーは、半日でカンボジアの観光名所を回るというもの。
朝日のアンコールワットから始まり、アンコールトム・タプロームと3大遺跡をもれなく観光。半日でも見どころはしっかり押さえた充実の内容である。
このツアーのポイントは、アンコールワットで朝日を見た後はそのまま遺跡内を観賞するという点。多くのツアーでは朝日を見たらホテルに戻り朝食をとるため、この時間帯は混雑が少ない穴場の時間。世界中から観光客が押し寄せるアンコールワットだが、落ち着いて散策できると参加者から高評価を得ている。
遺跡内はかなり歩くが、半日コースのため午後はゆっくり休憩できるのもありがたいポイント。無理せず観光を楽しむならぜひこのプランを。
⑦プライベートチャーターで3大遺跡を効率的に巡るツアー
基本情報
料金 : | USD54.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 10.5時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワット(西塔門、第1回廊、十字回廊、第1-3回廊など)、アンコールトム(南大門、バイヨン、象のテラスなど)、プノンバケンまたはプレループなど |
総合評価
プライベートチャーター車で回る3大遺跡!途中でショッピングも楽しめる充実ツアー。
コスパ評価
お手頃価格で観光もショッピングも堪能できる高コスパ。
口コミ評価
ガイドの対応がよく、「参加してよかった」というという口コミ多数。希望に従って旅程を再編してくれたという声も。
概要説明
こちらのツアーは貸切の車で3大遺跡を回るという内容。遺跡群はどこもかなり歩くので、エアコンのきいた貸切車は途中の休憩がわりに必須という声も。
体力に自信のない人、年配の方、時間がなくて効率的に回りたいという人にはうってつけのツアーである。
ツアーではアンコールトム、タプロームを見学した後は市内で昼食。その後はアンコールワット観光に。ツアーのハイライトは遺跡に沈む夕日の観賞で、プノンバケンかプレループかのいずれかを選べるようになっている。
合間には人気のキャンディーショップやクッキーショップに立ち寄るので、ちょっとしたお土産物を買うのに便利である。ガイドも親切で好評。一日でカンボジアを楽しむならこのツアーがおすすめだ。
⑧ベテランガイドのアテンドで観光がいっそう楽しくなる人気ツアー
基本情報
料金 : | USD60.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 10-13時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワット、アンコールトム、タプロームを中心に参加者の希望による |
総合評価
ベテランガイドが案内する3大遺跡! オプションの充実度も嬉しいプラン。
コスパ評価
類を見ない充実したツアーで、満足度を考えればコストパフォーマンスも良好。
口コミ評価
200件を超える口コミのほとんどが高評価。「このプランに申し込めば間違いはない」という口コミもあり。
概要説明
こちらはアンコールワット・アンコールトム・タプロームの3大遺跡めぐりと、プノンバケンでの夕日観賞が付いたカンボジア観光の王道コース。オプションではアンコールワットで気球に乗ったり、アプサラダンスのディナーショーを楽しむこともできる。
このプランの特徴は
ガイドが熟練で、説明やアテンドが丁寧なところ。遺跡での解説がわかりやすかったため理解が深まり、より一層感動できたという声が寄せられている。
また貸切ツアーのため対応が柔軟なことも魅力。カンボジア旅行が2回目の人には、前回行った所を聞いた上で別の見どころを紹介してくれるなど、細やかな配慮がこのプランの人気の秘密だ。自分らしい楽しみ方をするならぜひこちらを。
⑨3大遺跡と「天空の城ラピュタ」の世界を楽しめるツアー
基本情報
料金 : | USD70.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 13-16時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワット、アンコールトム(南大門、バイヨン)、タプローム、ベンメリアなど |
総合評価
密林の廃墟寺院に足を踏み入れる、貴重な体験が思い出になること間違いなし。
コスパ評価
距離が離れた3大遺跡とベンメリアを1日で巡るツアーとしてはコスパ抜群。
口コミ評価
「充実の1日を過ごすことができた」と好評。「初めてのカンボジア旅行におすすめ」という声も。
概要説明
こちらのツアーはカンボジアの3大遺跡と、森の中の秘境の寺院「ベンメリア」を見学するツアー。王道の観光スポットに加え、ツアー会社おすすめの穴場の夕日観賞スポットにも案内するという内容だ。
プランの目玉はなんといってもベンメリア。
ジャングルの中にある木やツタに覆われた寺院で、周囲に地雷があったため長い間立ち入り禁止だった遺跡だ。今は入場可能、発見された当時そのままの神秘的な姿が見られる。「天空の城ラピュタ」のモデルの一つともいわれ、カンボジアに来たらぜひ訪れてほしいスポットだ。
ランチはカンボジア料理「アモック」で舌鼓を。魚やカレーペーストをバナナの葉で蒸したこの料理は現地の雰囲気満点。カンボジアを満喫する一日をぜひ。
⑩貸切で気ままに巡るアンコールワットツアー
基本情報
料金 : | USD28.00- |
送迎 : | あり |
所要時間: | 4-4.5時間 |
開催曜日: | 毎日 |
スポット: | アンコールワットなど |
総合評価
旅程に合わせて短時間で自分の行きたいところへ足を運びたい人におすすめ。
コスパ評価
短時間のため1日みっちりのツアーよりお得感は劣るが、人数が多ければ多いほどよりお得に利用できる。
口コミ評価
「利用してよかった」「便利だった」という声が多数で高評価。
概要説明
こちらのツアーはアンコールワットを貸切の車もしくはトゥクトゥクで回るというもの。日本語ガイドが付いているため、遺跡のことがよくわかると好評なツアーである。
基本プランはアンコールワットの観光のみだが、オプションでアンコールワットのサンライズ観賞を組み込んだり、別料金でほかの遺跡をプラスアルファすることも可能。貸切プランのため、希望があれば尋ねてみるのをおすすめする。
またこのプランは
貸切のため、特にお子様連れの家族に人気がある。団体ツアーだとほかの参加者に迷惑がかからないかと気になるが、貸切だとそんな心配もなく楽しめる。子どものペースに合わせてくれるこのプラン、家族でアンコールワット観光をするならおすすめだ。
※本サイトの内容は、2019年3月時点の情報に基づき作成したものです。ツアーの諸条件は変更になる場合があり、本サイトはその内容を保証するものではありません。
アンコール・ワットツアーで訪れる代表的なスポットの解説
①アンコール・ワット
アンコール・ワットは、
カンボジアの北西部・シェムリアップに位置するクメール王朝時代の遺跡群「アンコール遺跡」を代表する寺院。カンボジアの国旗中央にも国の象徴として描かれているカンボジアを代表する歴史的建造物で、ユネスコの世界文化遺産に指定されている。
「アンコール」はサンスクリット語で「王都」、「ワット」はクメール語で「寺院」を意味する。12世紀前半、アンコール王朝のスーリヤヴァルマン2世によってヒンドゥー教寺院として建てられ、16世紀後半に仏教寺院に改修された。現在も上座部仏教寺院となっている。周壁が東西1,030メートル、南北840メートルにもなる巨大建造物で、
クメール建築の大傑作だ。
1970年代、ポル・ポト派によって、多くの奉納仏が首を刎ねられ砕かれて敷石にされるなど、破壊の憂き目に遭った。現在も各国の協力を受け修復の途上にあるが、長きにわたってカンボジアを見守り続けた寺院はその
破壊の痕跡も含め、一見の価値ある壮大さだ。
②アンコール・トム
アンコール・トムは、アンコール遺跡のひとつで
アンコール・ワットの北に位置する城塞都市遺跡。「トム」とはクメール語で「大きい」という意味だ。その名の通り約3キロメートル四方で、幅100メートルの堀と、ラテライト(赤土)で作られた高さ8メートルの城壁で囲まれた巨大遺跡だ。
その歴史はアンコール・ワットよりもさらに古く、889年に即位したヤショヴァルマン1世が建設した王都ヤショダラプラに端を発する。その後放棄されるも944年に即位したラジェンドラヴァルマン2世が再びアンコールに遷都。プレループ寺院が建設された。
現在のアンコール・トムが建設されたのは12世紀後半のことだ。
周囲の遺跡とともに世界文化遺産に登録されており、ヒンドゥー教と大乗仏教の混淆と、古代インド建築理念の影響を受けた建築様式が特徴。
中央には古代インドの世界観で世界の中心にそびえた山「メール山」(須弥山)を象徴する寺院「
バイヨン」が位置する。塔の4面に掘られている人面像が特徴的で、
謎めいた微笑みを浮かべる巨大な観世音菩薩の四面像は「クメールの微笑」と呼ばれている。
バイヨンの北西には、11世紀中頃にヒンドゥー教の神シヴァに捧げられた寺院「
バプーオン」が位置する。こちらもメール山を象徴し、東西425メートル、南北125メートルにも及ぶ左岸の周壁に囲まれた巨大な建造物だ。15世紀後半には仏教寺院に改められている。歴史の激動で何度も建造物に手が加えられた上、損傷が激しく、2011年に51年にも及ぶ修復作業を経てようやく公開に至った。
そのほかにも12世紀末に築かれた象の彫像が特徴的な「
象のテラス」など、著名かつ歴史的に重要な建造物が多数点在し、アンコール・ワットと並んでカンボジアを代表する遺跡だ。
③プレループ
プレループはアンコール遺跡のひとつで、ヒンドゥー教寺院。889年に首都をアンコールに戻した王・ラジェンドラヴァルマン2世によって961年に建てられた。「プレ」は変化、「ループ」は「体」を意味し、その名はかつて境内の石槽で行われていた火葬に由来するとされている。
最上層にそびえる中央祠堂からはカンボジアの平原が一望でき、
夕陽とアンコールワットをともに眺めることができるスポットとして人気を集めている。
④タ・プローム
タ・プロームはアンコール遺跡のひとつで、12世紀末に仏教寺院として建立され、のちにヒンドゥー教寺院として改修されている。三重の回廊に覆われた
遺跡にはガジュマルの木が食い込み、呑み込まれようとしているようにも見える姿が特徴。
タ・プロームの修復を担当しているインド政府がガジュマルの除去を含む修復計画を発表するも、もはやこの木々が遺跡を支えているのではないかという意見もあり、ユネスコを中心として議論が紛糾している。
映画
「トゥーム・レイダー」「トゥー・ブラザーズ」の撮影地としても使われた美しい寺院だ。
⑤プノン・バケン
プノン・バケンはアンコール遺跡に含まれる、10世紀初頭に建てられたヒンドゥー教寺院。ヤショヴァルマン1世が遷都した都ヤショダラプラの中心としてメール山を表すものとして建立された。
五層の基壇と、その最上壇に5つの祠堂を有する構造のピラミッド型を成している。
ヤショダラプラは1辺が4kmの堀で囲まれ、アンコール・トムよりもさらに大きかったとされている。その中心的寺院であったプノン・バケンは一辺が76メートルある第一基壇から五層の基壇によって支えられている巨大建造物だ。
標高67メートルの丘の頂上に建てられ、寺院の高さは47メートル。主祠堂は
アンコール遺跡のなかで最も高い位置に建ち荘厳な雰囲気を漂わせる。アンコール・ワットが見下ろせる唯一の場所であり、360度の景色が望めるため、建造物自体の価値はもちろん、その眺めも一級。夕日のビューポイントとしても有名だ。
⑥バンテアイ・スレイ
バンテアイ・スレイはアンコール遺跡の一つで、967年に着工されたヒンドゥー教の寺院跡。「バンテアイ」は「砦」、「スレイ」は「女」を意味する。規模はほかの遺跡に比べると小さいが、
赤い砂岩に精巧で美しい彫刻が全面に施され、「アンコール美術の至宝」と賞賛される。観光客からも人気の高いスポットだ。
アンコール朝の衰退に伴って忘れ去られていたが、1914年に再発見された。なかでも曖昧な微笑みを湛えた
デヴァター像(女神像)は「東洋のモナリザ」とも呼ばれ愛されている。このデヴァターは、『人間の条件』などを著したフランスの作家で冒険家アンドレ・マルローによって1923年に一度盗み出され、注目を集めた。
⑦ニャック・ポアン
ニャック・ポアンはクメール語で「絡み合うヘビ」を意味する、
仏教寺院を備えた丸い形の人工島。12世紀の後半、ジャヤーヴァルマン7世の時代に築かれた。名前は寺院構造の周りを取り囲むようにあしらわれたインド神話の蛇の精霊ナーガの彫刻に由来している。
中央に設けられた一辺70メートルの人工池の中央に円形の基壇が築かれ、その上に中央祠堂が位置する。それを取り囲むように東西南北に4つの小池が配されている。
元々はヒンドゥー教の考えに基づき、沐浴施設を備えた医療施設として建てられたものだ。池に映り込む姿がミステリアスで美しい遺跡。
⑧ベンメリア
ベンメリアは、アンコール遺跡群のひとつでアンコール・ワットの約40キロメートル東に位置する巨大寺院遺跡。その名はクメール語で「蓮池」を意味する。
全貌が明らかになればアンコール・ワットを凌ぐほどの規模だと推測されているが、崩落が激しく、密林に呑み込まれた廃墟の様相を呈している。
アンコール・ワット建造前の11世紀末から12世紀初頭にかけてつくられたもので、「東のアンコール・ワット」とも称されている。類似点が多く、アンコール・ワットに先立ってそのモデルとして計画されたものではないかと言われている。
ヒンドゥー教寺院として建てられたが、仏教のモチーフをあしらった彫刻も多数見受けられる。修復が進んでおらず指定されたコースを外れると危険だが、発見された当時の姿を見ることができる貴重な遺跡。
映画『天空の城ラピュタ』のラピュタを彷彿とさせる雰囲気を漂わせている。
⑨クバール・スピアン
クバール・スピアンは、シェムリアップ州に位置するクメール王朝時代の遺跡地域。主要なアンコール遺跡群から25キロメートル北東のストゥン・クバール・スピアン川に沿って建造されている。
砂岩の地層によって成る
川底や川岸に刻まれた彫刻によって構成され、「1000本リンガの谷」「千のリンガの川」とも呼ばれている。「リンガ」とは、ヒンドゥー教の神シヴァを象徴するモチーフのことで、ここにあしらわれているのは男性器を模したものである。他にも、シヴァやヴィシュヌ、ブラフマー、ラクシュミーといったヒンドゥー教の神々や、ラーマやハヌマーンなどのインド神話の神々、ウシやカエルなどの動物などが彫られている。
見事なレリーフと、その脇や時には上を流れる清流はここでしか見られない神秘的な光景。
⑩トンレ・サップ湖
トンレ・サップ湖は東南アジア最大の湖。「カンボジアの心臓」とも呼ばれ、乾季でも琵琶湖の3倍、雨季には琵琶湖の10倍以上の大きさとなり、アンコール朝の時代からカンボジアの人々の生活を支えている。
1年のほとんどは水深1メートルほどの深さだが、雨季になりモンスーンが吹くとトンレサップ川が逆流し、湖の面積が広がる。
水上生活者の数も世界最大で、100万人が住んでいるとも言われる。学校や教会、お土産を買える商店など、まさに湖の上に「街」があると言える。
観光客向けに水上村をボートに乗って見学するツアーが多数催行されており、船を繋いでいるだけの家や雨季の増水に備えて高床式になっている家など、普段の私たちとはまったく異なるスタイルで暮らす人々の生活を垣間見ることができる。